なぜウクライナだけ?放置される「難民申請者」 「扱いの違い」に愕然とする支援者の声

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難民申請中の人の在留資格は様々だが、就労ができない短期滞在や、在留資格のない非正規滞在であるなど、多くが不安定な状況にある。こうした人たちが日本で安定して暮らすためには、難民認定を受ける必要がある。難民として認定されれば、「定住者」の在留資格が得られ、就労もできる。さらに国民年金や福祉手当などの受給資格も得られる。

しかし日本では、自国政府から迫害されていることを証明することなど難民認定に高いハードルがあり、2021年には2413人が難民申請をしたのに対し、認定されたのはわずか74人にとどまっている。

支援者頼みの医療費負担

昨年、入管の対応にスポットが当たった事件が起こった。2021年3月、名古屋出入国在留管理局で収容されていたスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが、施設内で亡くなった事件だ。

ウィシュマさんは収容中に体調不良を訴え、仮放免を求めていた。だが、なかなか認められず、適切な治療を受けられないまま亡くなった。それだけでなく、苦しむウィシュマさんに対して職員が侮蔑的な言葉を投げかけるなどの人権侵害行為が、明るみに出た。

これをきっかけに出入国在留管理庁は有識者会議を設け、報告書案をまとめている。その中では施設の医療従事者と職員の相談機会を設けることや、医師確保のため施設で働く常勤医師に特例で兼業を認める法整備を進めることなどが盛り込まれており、入管内での医療体制は見直されつつある。

だが、仮放免の許可が下りて外に出された後の医療体制については、何も変わっていない。仮放免中は、就労が認められず、国民健康保険にも加入できない。多くの仮放免者は収入がなく、医療費の負担が重くのしかかる状況に置かれているのだ。

そして、その医療費負担は、NPOなどの支援団体や民間の支援者に委ねられている。仮放免は病気などが理由で認められるが、入管は仮放免者に社会的保障がないことを知りながら外に出している。つまり、民間の支援者に医療費などのセーフティネットを頼ることを前提にしているのだ。

何でもいいから働いて借金を返したい

 「支援してくれる友達の家に住んでいるが、借金が増え続けることが申し訳ない。早く難民認定を受けて、何でもいいから働いて返したい」

こう話すのは、首都圏に住む、南アジア出身の女性だ。日本滞在中に母国で政情不安が起き、これまで数回難民申請をしてきたが、認定は下りなかった。仮放免中なので働くことができず、家賃や食費などの借金は増えるばかりだ。肩身の狭い思いをしながら、難民認定を待ち続ける状況に置かれている。

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