労基署が動く事件とスルーされるトラブルの違い 上司にクビと言われた!労基署は助けてくれる?

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一方で、労基署が比較的早く動く問題があります。それは未払い残業(時間外労働)です。相談員によって温度差はありますがタイムカードなどの証拠が揃っていれば有利にはたらくでしょう。訴訟などに移行している場合は動きが鈍くなりますが、そうでない場合、まずは相談員が相談者の話を聞いてくれるはずです。

それが直接解決に結びつくかどうかはわかりませんが、「労基署に相談した」という事実が意味をもつ場合があります。各都道府県の労働員会によるあっせんを求めたり、訴訟で解決しようとしたりする場合です。あっせんや訴訟に移行した際に、労基署に相談した事実(アドバイスなど)は事態を客観視した情報として評価されるでしょう。

明確な証拠があれば告訴できる

また、労基署に告訴をするという方法も存在します。告訴とは、被害者が犯罪事実を申告し、訴追を求めることです。告訴を受理した捜査機関は捜査を開始しなければならないのです。逆に言えば、労基署に告訴を受理してもらい捜査をしてもらうためには、告訴状の内容が適切であることや、明確な証拠が用意されている必要があります。

告訴状を作成したら、管轄の労基署に提出します。しかしすぐには受理されないはずです。筆者が知る限りでも、受理したケースはほとんどありません。告訴を受理すると捜査を開始しなければいけないからです。企業側に明らかな問題があるという証拠が用意されていたとしても、労基署はまずは事実関係を確認する作業を行うはずです。

法律的な見地や専門性に乏しい会社員が告訴状を作成することは至難の業ですから、告訴の覚悟を決めた場合は法律家に依頼するケースが現実的でしょう。また専門家の力を借りて告訴しても、結局受理されないというケースも多々あります。このように考えると、労基署に駆け込んだだけでは、すぐにつらい状況を改善することが困難であることがわかると思います。

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