日本がずっと勝てない「美食の世界大会」のすごみ 世界から24人の精鋭が集まる食の最高峰対決

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持ち時間の数分前になると、スクリーンには仕上げの様子が大映しになり、会場には緊張感が走る。万が一間に合わなかったときには、タイムに応じて減点になる。無事、完成し、拍手。そして、1つずつボックスを、男女のサービスマンに渡し、彼らは壇上を回り、審査員の元へと届ける。テイクアウェイボックスを開けたときの鮮やかな色や、華やかな仕上がりがどの国も印象的だった。

採点は、見た目の美しさ、構成、味、食感、創意工夫など、細かく項目が分かれていて、それぞれに、評価点を書きこんでいく。

途中、時間をずらして、プラッターの持ち時間が終了となるが、今度はアシスタントシェフたちが、夢のように美しいプラッターをもって壇上を一周する。主菜である牛肉のブレゼを彩るガルニの盛りつけは、各国の腕の見せどころだ。切り分けられ、それぞれのプラッター審査員のもとに届けられ、同じく、細かな7~8項目に、点数を入れていく。こちらは温かな料理なので、火入れや温度も重要なポイントとなる。

イタリアチームのプラッター(写真:Julien Bouvier/Umami)

こうして、最終組までの審査が続いていき、3時間後にはお祭りのような表彰式が行われる。昨年の結果は1位フランス、2位デンマーク、3位ノルウェーとなった。残念ながら、戸枝氏は入賞にいたらず、9位に終わった。

3位以内に入ると「ボキューズ・ドールファミリー」に

審査員の多くはミシュランの星や、MOF(国家最優秀職人賞)を持った料理人で、過去にボキューズ・ドールで優秀な成績を収めた人が選ばれる。特に、3位以内に選出されたシェフは「ボキューズ・ドールファミリー」とも呼ばれ、こうしたイベントなどには必ず立ち合い、トップシェフとしての扱いを受ける。もちろん、その後、星を獲得したり、MOFを取得する例は、枚挙にいとまがない。つまり、一度入賞すればその後の料理界での活躍が保証されるといっても過言ではないのだ。

日本は初回の1987年から参加しているが、いまだ、3位以内の入賞は、2013年の浜田統之(現星のや東京総料理長)氏のみだ。一方、昨今の常勝国はデンマークやノルウェーなどの北欧勢、そしてフランスである。

さて、来るべき2023年の日本代表は、1月の国内大会で石井友之氏(ひらまつグループ「アルジェント」所属)に決定した。国内大会のテーマは鳥取の椎茸と青森のシャモロック。素材の特製を研究しつくした料理で、20人の出場者の中から見事代表の座を勝ち得た。

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