世界で発生「サル痘」45歳以下がハイリスクな理由 水際対策困難で「天然痘ワクチン」配備も念頭に

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懸念は、サル痘はいわゆる水際対策が困難なことだ。空港などの玄関口で国外からの流入をせき止めようとするのは、現実的ではない。

一番の理由は、潜伏期間の長さだ。感染してからおよそ10日前後、兆候があっても軽い頭痛や発熱程度で、水疱や膿疱が出るまでは特徴的な症状は現れない。

新型コロナのような簡易検査(抗原検査)ももちろんないし、PCR検査も実施できる件数はごくごくわずかで、全員検査など考えようもない体制だ。

ただ、その必要はない、と言っていいだろう。

感染者の増加スピードや経過を見る限り、サル痘は、ヒトからヒトへの感染力が新型コロナのように強くはないし、毒性もそれほどではない。

WHOの5月24日段階での見立ては、「封じ込め可能」というものだ。

欧州疾病予防管理センター(ECDC)も、欧州での感染状況を受けて、「現在の症例のほとんどは軽症で、感染拡大の可能性は非常に低い」が、「複数の性交渉相手がいる人たちの間で拡散する見込みは大きい」との見解を発表している。

たしかに、空気感染(エアロゾル感染)する新型コロナと違って、サル痘の感染経路は接触感染もしくは飛沫感染だ。感染動物や患者の血液、体液、発疹およびその中の液体に触れることで感染する。

シンプルに言えば、触れなければうつらないのだ。

とはいえ2018年には英国で、患者の使用した寝具、具体的にはベッドシーツの交換から医療従事者が感染した例もある。間接的な接触でも感染するくらいの感染力はある、ということだ。その際は134人の濃厚接触者のうち発症は3人で、その全員が回復した。

「特効薬」が使えない日本

サル痘は、特別な治療を行わなくても、通常は2~4週間で自然に治癒する。致死率は一般に0~11%とされ、先進国での死亡例は報告されていない。

治療に関しては、残念ながら国内では特効薬は流通しておらず、対処療法のみだ。

海外には、サル痘への有効性の確認されている経口抗ウイルス薬がある。特に、「テコビリマット」は、深刻な副作用もなく、欧米では天然痘やサル痘に対して使用できる。

世界的医学誌『ランセット』の最新報告によれば、英国で発生したサル痘患者がテコビリマットを服用したところ、治療開始から48時間でウイルス排出は止まり、10日間で退院できたという。

こうした特効薬が使えないとなると……治るまで2~4週間というのは、想像しただけでも長い。

小学生以降に水ぼうそうを経験した人はおわかりいただけると思うが、水分や膿のたまる発疹が全身に出るのは、本人もつらいし、感染拡大防止の観点でもやっかいだ。

治っても発疹部分が盛り上がったり茶色くなったりと、痕が残りやすい。発疹は顔にも出やすいので、ショックを受ける人もいる。やはり感染・発症しないに越したことはない。

万が一、国内で患者が発生し、濃厚接触となってしまった場合はどうしたらいいのか?

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