大阪「維新」の挑戦は「中央支配」を打破できるか 「大阪政治攻防50年」から考える日本政治の未来

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2020年代以降の日本社会が直面する問題は、安全保障や軍事を別にすれば、経済成長のストップ、停滞と低迷による先進国脱落の危機などが重大な課題だが、少子・高齢化による人口減社会、赤字膨張による財政危機の到来も大きな懸念材料である。

日本の人口は今後、減少が続き、40年に1億1092万人、50年に1億人、60年には9913万人になるという(国立社会保障・人口問題研究所の15年国勢調査に基づく「日本の将来推計人口」・17年推計)。一方で、国の財政赤字は拡大の一途をたどっている。国債と借入金、政府短期証券の残高を合わせた「国の借金」は22年3月末で1241兆円を超えた。

「日本の先行指標」の大阪はどうか。府の人口は10年の 887万人がピークで、以後、減少期を迎えた。22年3月1日の時点で約 878万人だが、推計では30年に 833万人、40年に 776万人まで落ち込むと予想される。

大阪市は1965年に戦後最高の316万人を擁していたが、その後、95年に 260万人まで落ちた。22年3月1日の人口は約 274万人で、推計によると、今後は30年に 269万人、40年に 257万人と、なだらかに減少するという(以上、大阪市作成「大阪市人口ビジョン」16年3月策定・20年3月更新より)。

大阪は日本の先行モデルとなれるか

大阪府の山口信彦副知事は人口減問題への対策が必要と訴える。

「人を呼び込む施策をしっかりやらなければなりません。働く世代、子供を産んで育てる世代を呼び込むことが大事ですね。この世代は働く場所がなければ呼び込めないので、雇用を創出できる成長戦略を推し進める。学費の無償化など、子育て、教育費のサポートをしっかりやって、子育て世代が住みやすく、活気のある都市にする。それが重要と思います」

大阪府の財政についても、「持続性はある」と訴える。

「コロナの影響で税収が2割くらい減るのでは、と予測されましたが、実際は下がっていません。21年度の税収はコロナ前の水準より微増です。財政調整基金も取り崩していません。コロナが終わってみないと何とも言えませんが、財政の状況は悪くありません。財政の持続性という点では、大阪府では財政調整基金で確保する最低ラインを1400億~1500億円と見て財政運営をやっていますが、今の段階ではクリアできています。このままコロナを乗り切り、経済活動が再開されれば、財政運営は大丈夫だと思いますね」

維新結党後、大阪での約12年の維新政治の新しい挑戦は、これからの日本経済の先行モデルとなるかどうか。

日本は「失われた30年」の長期停滞が尾を引き、今や先進国から脱落も、という危機と背中合わせである。大阪での新しい挑戦は、日本経済が将来、先進国脱落の危機を脱して「繁栄する元気な日本」の復活と世界をリードする「新しい先進国日本」として再生を遂げるための先行事例となるかどうか。コロナ危機や国際的な安全保障環境の激変など、不測の阻害要因が見舞う中で、大阪での実験は、成否いずれの結果を生むのか。25年までの約3年が正念場である。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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