原油価格は「ロシア制裁厳格化」で上昇する可能性 G7の「輸入禁止」でも需給はあまり緩まない?

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原油市場はロシアによるウクライナ侵攻によって、一時パニック的な急伸を見せた。だが、その後はロシアへの制裁が中途半端なものにとどまったことや、中国が欧米の制裁方針を無視する形でロシア産原油の購入を継続したこと、ロシアがインドに対し大幅な価格の引き下げを提示した。

これらを受けて、「生産は懸念されているほどに落ち込まないのでは」との見方が浮上する中、NY原油市場はいったん1バレル=100ドルの大台を割り込んだ。その後は100ドルをやや上回ったあたりを中心とした水準まで値を回復、比較的落ち着いた推移が続いていたが、追加制裁提案のニュースが伝わって以降は、改めて高止まりの可能性が指摘されている。

中国のロックダウンの影響やロシアへの制裁措置の反動によって、世界的に景気が減速、石油需要が落ち込むとの懸念が根強い中、需要もある程度は減少しそうだ。
だが、供給面の先行き不透明感があまりにも強いため、こうした需要面の弱気材料だけでは積極的に売りを仕掛けられないというのが実際のところだ。はたしてこの先ロシアの生産はどの程度落ち込み、それによって原油相場はどの程度上昇する余地が残っているのだろうか。

すでにロシアの生産は減少傾向

すでに、国際エネルギー機関(IEA)は4月13日に発表した月報で、ロシアの生産は4月には日量300万バレル減少するとの見通しを示している。

だが、これはあくまでもドイツが積極的な禁輸措置に反対していることを前提とした推定値だった。今回のEUの追加制裁措置によって、生産がさらに落ち込む可能性は高いと見ておいたほうがよい。

やはり、4月12日に石油輸出国機構(OPEC)のモハメド・バーキンド事務局長が「ロシアの石油生産は最大で日量700万バレル減少する恐れがあり、それをOPECが穴埋めすることは不可能」との見通しを示したことを受け、NY原油相場が一気に6ドル以上急伸したのも記憶に新しい。

ブルームバーグは4月21日付の記事で、原油を掘削する際に発生する随伴ガスを燃焼させることに伴うガスフレアを、静止衛星の画像で分析することにより、同国の石油生産はウクライナ侵攻前から平均で10%は減少しているとの見通しがあることを紹介している。

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