安倍外交が「イスラム国」のテロを誘発した 孫崎享・元駐イラン大使に聞く

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第2に、安倍首相はすべての政策においてそうであるが、ある案件、事象について、自分の立場を決めたら、その路線を突き進む。それに伴うリスクを考慮せず、またその立場と違った意見や助言をまったく好まない。例えば、中曽根康弘元首相は、後藤田正晴のような人を官房長官に据えて、違った意見を聞こうとした。安倍首相はそのようなスタイルではない。安倍首相の周囲やブレーンには、安倍首相と考えを同じくする人々しかおらず、苦言を呈したり、忠告をしたりする人がほとんどいない。

集団的自衛権行使に進むとどうなるか

米国の中東政策は米ソ冷戦構造の崩壊以降、歪んでいる。その理由は2つある。第1に軍産複合体の要請であり、第2にイスラエルの存在だ。

1980年代末~90年代にかけては、軍需から民需へ転換する必要があったが、ペンタゴンは軍事力を維持したい。そこで、敵としてイラン、イラク、北朝鮮と言った不安定な国々を想定した。だが、これらの国が自ら米国を攻撃するわけはないから、こうした国々の体制を変えるべきだという主張を持って、「中東民主化」という名目で積極介入していった。

現状でも、国防費は削減する方向にあるが、イラク、アフガニスタン戦費は別枠ということになっていた。しかし、オバマ大統領はアフガニスタン、イラクからの撤退を進め、昨年は軍需産業でも人員整理が行われていた。そこへ、「イスラム国」が台頭してきたことで、軍需産業の株価は暴騰している。

今後、集団的自衛権行使の法整備が進み、日本が後方支援という名目で、中東地域に自衛隊を派遣する方向にある。するとどういうことが予想されるのか。今回の事件は教訓になっている。アラブ・イスラム世界と長年かけて築いた良好な関係や、信頼は毀損されていき、日本人が「テロ」の対象になることが懸念される。今回のイスラム国の人質殺害事件がその嚆矢であってほしくない。

内田 通夫 フリージャーナリスト

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うちだ みちお / Michio Uchida

早稲田大学商学部卒。東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』の記者、編集者を歴任。

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