東レが新興国の攻略に先手、炭素繊維を相次ぎ増産
炭素繊維業界で4割と世界トップシェアを握る東レが、増産計画を矢継ぎ早に打ち出している。
先月には中断していた愛媛工場の生産設備増設工事を再開。韓国工場でも2013年1月までに2200トン規模の生産設備を新設する計画を発表した。これらが稼働すれば年間生産能力は2万1100トンとなり、2位の帝人子会社・東邦テナックスの1万3900トンをはるかにしのぐ。
その傍らで今年3月、独ダイムラーと炭素繊維販売を担う合弁会社を設立。自動車向けを中心とした販路拡大にも余念がない。
炭素繊維は鉄の10倍の強度を持ちながら4分の1ほど軽いのが売りで、航空機や自動車部品から風力発電のハネ部分まで用途が広がっている。今後も市場拡大が見込まれ、10年後には現状の5倍の1兆円規模に成長するという予想も出ている。
こうした中、東レも同事業の育成に躍起。2月3日に発表した中期経営計画では、14年3月期の売上高を、前期の倍以上となる1200億円、営業利益は150億円に伸ばす(前期は53億円の赤字)という目標を掲げた。「今後も世界ナンバーワンの地位をさらに強固なものとする」と、日覺昭廣社長の鼻息は荒い。
安価品への対抗策
現状、高品質を武器に米ボーイングの新型機「B787」への炭素繊維を独占供給するなど順風満帆に見える東レだが、不安要素も浮上している。中国やトルコなど新興国が手掛ける、品質は低いが安価な炭素繊維の存在だ。日覺社長も「今後は安価な市場でも高シェアを保持できなければ、いずれは高品質分野も低価格帯から侵食されていく」と懸念を示す。