海外で予想以上「EVシフト」日本は本当に大丈夫? 今年中には世界で販売される車の1割がEVに

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とくに中国と欧州でEVの導入が進んだ主な理由は、政府による手厚い支援策だ。ともに以前から日本円に換算して100万円程度の補助金を交付することで、消費者側から見てEVの実質価格を手ごろな値段に抑えてきた。これに加え、排ガス規制の強化によってメーカー側に対してもEV事業への転換を促した。

逆に、中国と欧米以外の国や地域、なかんずく日本でEV市場がほとんど育っていないのもやはり政策の問題であろう。日本で中国や欧州並みのEV購入補助金や充電インフラの整備が始まったのは事実上、今年に入ってからだ。この点について本稿ではこれ以上深入りしないが、今後はともあれ少なくともこれまでの日本政府は自動車産業のEVシフトには消極的であったと見るべきだろう。

テスラは値上げしても販売台数が増加

2022年に入り、EVを取り巻く環境は世界的に悪化した。ここ数年の新型コロナ・パンデミックによるサプライチェーンの混乱に加えて、ロシアのウクライナ侵攻に対する西側の経済制裁、それに伴う車載電池用の炭酸リチウムやニッケルなど資源価格の高騰により、テスラをはじめ主要メーカーの多くは10%以上の値上げに踏み切った。

これはEVの売り上げ急落につながる恐れもあったが、実際はそうはならなかった。テスラの2022年第1四半期のEV販売台数は31万5000台と、前年同期比で68%増。欧米の自動車メーカー各社も、ガソリン/ディーゼル車などの販売台数が減少する中、EVだけは売り上げが伸びている。

EVの市場調査を行うEV-Volumes.comの推計では、世界市場における2022年第1四半期の電気自動車の販売台数は、前年同期比で120%増を記録した。つまり倍増以上のペースである。

値上げにもかかわらず売り上げが急増した理由は、最近のガソリンなど燃料価格の高騰から従来車が敬遠され、それに代わってEVへの関心が高まったこと。また、アクセルを踏み込んだときの今までにない加速や広々とした車内空間などEVならではの快適さ。さらに比較的若い消費者や富裕層の間で気候変動や環境問題への意識の高まりが、多少値段が高くてもEV購入に踏み切る動機になっているようだ。

このペースでいけば、2022年には世界の自動車販売に占めるEVの割合は16~20%に達する見込みだ。このうちBEV(Battery Electric Vehicle:車載電池だけで動く純粋な電気自動車)の占める割合は約7割なので、今年中にはおそらく世界で販売される自動車の少なくとも10%程度、つまり10台に1台はBEVになりそうだ。

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