海外で予想以上「EVシフト」日本は本当に大丈夫? 今年中には世界で販売される車の1割がEVに

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このようにEVの市場が急拡大する中、気になるのは日本メーカーの立ち位置だ。2021年、世界の電気自動車の販売台数ランキングで上位を占めたのは、ほとんどが欧米や中国、韓国などのメーカーだ。

●2021年のメーカー別のEV販売台数

(注)単位:1000台
(出所)Global EV Sales Ranking by OEM/OEM Group for 2021, EV-Volumes.com

日本勢ではルノー・日産・三菱連合(R-N-M Alliance)がかろうじて8位に食い込んだが、2020年の3位から順位を5つも落としている。

確かに日産自動車は2010年、世界初の量産電気自動車(BEV)「リーフ」を発売し、以降、約10年間で累計50万台以上を売り上げた。しかし最近順位が下落していることから見て、先行者利益をうまく生かして強力な足場を築くことができなかったようだ。

トヨタ自動車の販売の大半はPHEV

一方、トヨタ自動車は13位にランクされているが、そのEV売り上げの大半はPHEVだ。今後の主力となるべきBEVの販売台数は、現時点でほとんど無きに等しい。

トヨタは5月12日、SUBARUと共同開発した新型電気自動車「bZ4X」を個人向けサブスクリプション・サービス「KINTO」を通じて提供する予定だ。トヨタ初の量産BEVとなるが、今や世界で販売される自動車の10台に1台がBEVとなる中、正直出遅れた感は否めない。同社をはじめ日本メーカーはおそらく、ここまで急速に電気自動車、とくにBEVが海外市場で売り上げを伸ばしてくるとは予想していなかったのであろう。

EVの製造コストで最も大きな比率を占めるのは車載電池だ。それが1kWh(キロワット時)当たり100ドル(1万3000円)を切れば、電気自動車は(政府からの補助金抜きで)従来のガソリン車に対抗できる価格になり、一般消費者に広く受け入れられるようになる。業界関係者の間では、それが訪れるのは2025年ごろと見られてきた。

このころに照準を合わせて電気自動車の開発・量産化を進めれば十分間に合う―――そう日本メーカーの関係者は考えたのかもしれないが、実際にはそれよりだいぶ早くEVは本格的な普及段階に突入してしまった。

ちなみに現在の車載電池は資源価格の高騰もあって、1キロワット時当たり約160ドルと2021年の105ドルから大幅に上昇しており、これがテスラなど電気自動車の値上げにつながった。しかし、それでも欧米の消費者は「われ先に」とメーカー各社のEV購入予約リストに名を連ねている。

ただ、日本勢が出遅れた根本的な理由は、そもそも自動車の完全電動化には乗り気でなかったということだろう。

次ページハイブリッド車で世界市場を席巻した日本勢の計算
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