日テレ「悪女」麻理鈴は30年前の同作と何が違うか 打倒すべき偏見は性別より人を上下に隔てる価値観

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麻理鈴はまず峰岸から清掃スタッフの顔と名前を覚えるようにアドバイスされる。清掃スタッフは当たり前のように社内の掃除をしていて顧みられることが少ないが、社内の情報を誰よりも知っている。だからこそ味方にすれば頼れるのだ。麻理鈴はすぐに彼らと親しくなり何かと助けてもらう。このように花形の仕事に就いている正社員が偉くて非正規の清掃スタッフは顧みられないという状況こそが令和版の解決すべき問題になっている。

問題を抱えるのがいつも女性なのが気になる

そういう観点に工夫が見られておもしろいが、一点、気になるところがある。問題を抱えているのはいつも女性なのだ。第1回から4回まで毎回女性が軽く見られている。もちろんこのドラマが働く女性を対象にしているのでそれは仕方ないだろう。

それよりも気になったのが、第1回のゲスト・新入社員・大井美加(志田未来)以外、問題を抱えている人物が全員、メガネで地味ないでたちをしていたことだ。第2回の三瓶花子(阿佐ヶ谷姉妹・渡辺江里子)、第3回のオマケと軽く見られているマーケティング部のお荷物部署の梨田友子(石橋静河)、第4回の川端光と3人ともメガネで地味な服装あるいは男女兼用の服装をしているのである(麻理鈴もカラダのラインを拾わない、オーバーサイズでジェンダーを意識した服を着ている)。

川端はメンズの機能性を好んでいる設定とはいえ、ショートカットでメガネ、梨田は節約しているので服装に凝らない設定、三瓶は地味なグレーのスーツを着て、おどおどと自己主張しない人物という印象だった。”地味”なことが偏見の対象になり損しているという雰囲気を出したい意図もわからないことはない。でもそういうキャラ造型こそが偏見ではないだろうか。

そこからアップデートしてほしいと感じたのは筆者が地味なメガネだからというわけでは断じてない。メガネでもオシャレでむしろ派手で目立つ人もいるし、とても美しい顔立ちでおしゃれに気を使っていても不器用で影が薄く損している感じの人もいる。令和版「悪女」のほんとうの評価は第5回以降の問題を抱えるゲスト登場人物のビジュアルを見てからにしたいと思う。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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