日テレ「悪女」麻理鈴は30年前の同作と何が違うか 打倒すべき偏見は性別より人を上下に隔てる価値観

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女性同士が連帯して自分たちの尊厳を守っていく時代に違う生き残り方をしている夏目のちょっと切ない姿を第2回で描いたことで、令和版「悪女」は平成版「悪女」の焼き直しではなく、しっかり現代に寄り添ってアップデートしていますよと宣言したかのようだった。

令和版の麻理鈴の設定で、お酒好きなところは変わらない。だがタバコは吸わず、その代わりに自分で漬けたぬか漬けをつまみにしている。先輩峰岸も近年、大活躍の江口のりこでさばさばクールだけれど不思議な魅力があって、実は社内の実力派である人物の説得力があるし、麻理鈴との関係性もじつにいい塩梅だ。

令和版と平成版で変わらないのは麻理鈴がどんどん上層階に出世していくRPGスタイルと、出世の目的がT.Oさん(向井理)への想いであることだ。平成版以上にT.Oさんこと田村収は、エリートをやらせたらピカイチの向井理の力によって強烈に輝いているし、田中と田村の出会いはスカイダイビングというスケールの大きさである。

あくまで恋はきっかけにすぎない?

それだけT.Oさんの存在が大きくなっているにもかかわらず、T.Oさんと結ばれることがゴールという意識よりもあくまで恋はきっかけにすぎないような印象もある。田中が出世するたびに気になる職場の問題を解決し、誰もが自分らしく仕事ができるように変革をもたらしていく物語が清々しい。

第4回では、令和ならではのエピソードが描かれた。性別も年齢も問わないアバター企画を考えたエンジニア・川端光(ハリセンボン・近藤春菜)がその企画の本質を理解しない男性社員・小野(鈴木伸之)の態度に忸怩(じくじ)たる思いをする。だが「フェミニストはテロリスト」という「女王蜂症候群」に次ぐパワーワードに縛られて、川端は自分の存在意義を主張することができない。

ジェンダー平等をうたう現代らしいエピソードに象徴されるように、令和版「悪女」は女性も男性も関係なく、仕事に対する価値観をアップデートしていく物語になっている。打倒すべき社会の偏見は、性別よりも人間を上下に隔てる価値観である。

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