中国BEV市場で「ホンダが大苦戦」する3つの理由 「シェア1.5%」から飛躍するために何が必要か

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トヨタはスバルとの共同開発によるBEVのSUV、「bZ4X」を中国で2022年4月28日に予約販売を開始した。

操舵時にハンドルを持ち変える必要がないトヨタ初となる「ステアバイワイヤシステム」を採用し、ルーフに装着したソーラーパネルで生成された電気だけで年間1800kmも走行可能となるという。GM、フォード、ヒョンデも相次いでBEV専用モデルを発表しており、競争が一層激しくなると予測される。

なお、トヨタも、2つの合弁会社で兄弟車を販売する形態をとってきたが、bZ4Xについては「広汽トヨタ」「一汽トヨタ」のどちらでも、同一のモデル名で販売する点が例外的だ。

トヨタ初のBEV専用プラットフォーム採用モデル「bZ4X」(筆者撮影)

BEVシフトといえば、中国乗用車市場で15%のシェアを占めている、ドイツ・フォルクスワーゲンも忘れてはいけない。フォルクスワーゲンは、2020年に量産型EVの「ID.」シリーズ(計4モデル)を投入し、BEV市場に風穴をあけようとした。

しかし、2021年の販売台数は7万台にとどまり、中国BEV乗用車市場のシェアは、2.5%に過ぎない。顧客が求める車両機能や乗車体験を勘案すれば、従来の大手自動車メーカーといえどBEV事業は難しいのだ。

3列シート7人乗りのSUV、フォルクスワーゲン「ID.6 X」(筆者撮影)

果たしてホンダは勝ち抜けるのか?

国策でBEVシフトが進む中国では、自動車メーカー各社が電動化の波に乗り遅れないよう必死に取り組んでいる。今後、ホンダが中国のBEV戦略を実現するためには、デザインや車載機能の差別化だけではなく、乗車体験やガソリン車と異なるコンセプトの面でも、差別化を追求する必要がある。

国有合弁パートナーの東風汽車や広州汽車との関係を強化し、さらにはスマートカー・自動運転の実用化で先行する中国大手テック企業とも、能動的に協業してゆくべきであろう。

中国で販売台数の伸長だけでなく、車両の設計・生産から販売、アフターサービスまでの戦略大転換を意味する電動化戦略の方向性の見極めが、「e:N」シリーズに課せられた試金石となる。

今後、中国BEV市場で熾烈な競争を勝ち抜くためには、ホンダにしか作れない「人車一体」の走行体験を実現するBEVブランド価値の構築が求められるだろう。

湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 主任研究員、中央大学兼任教員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、中国自動車業界のネットワークを活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。大学で日中産業経済の講義も行う。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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