早く話し始める子と遅い子「学力差」その後の真実 比較対象にはなるが将来の成否を約束はしない

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私たちはみんな親バカだから、自分の子がグラフのどこに当てはまるかを調べるのは楽しいかもしれない。実際にはほぼ全員が話せるようになるのだが、それでも赤ちゃんの頃の差から長期的な差を予測できるかどうかは気になるところだ。早くおしゃべりを始めた子は、文字も早く読めるようになるのだろうか? 学校の成績もいいのだろうか?

大前提として、言語の発達は両親の学歴と明確な関連がある。一方で、両親の学歴は子どもの幼児期の読む力や後の学力テストの得点など、他の結果とも関連する。つまり、純粋に言葉の早い遅いという影響だけを調べる際には、親の教育歴などを極力排除する必要があるのだ。

言葉の遅い子は「学力スコア」がわずかに遅い

この分野での、最も大規模で厳密な研究が注目したのは、言葉が基準より遅かった子どもは、のちに他の面でも遅れを見せるのかというテーマだ。この研究では、生後24〜31カ月の32人の言葉の遅い子が集められた。子どもたちはこの時点で平均21語を話した。前のグラフだと平均をかなり下回っている。この調査の特徴は子どもたちに追跡調査が行われた点で、17歳まで調査が実施された。年齢が上がると、言語能力、学力テストの得点などが調査された。

結果から示されたエビデンスはさまざまだった。言葉の遅れた子のグループは、かなり後になっても学力テストの結果はわずかに劣るようだった。17歳時点のI Qスコアは対照群よりも低かった。

だが、得点が特別に悪いとはいえなかった。たとえば、言葉の遅れでは下位10%であっても、17歳でのI Qテストで下位10%に入る者はいなかった。

この結果は、多くの研究で一致している。中にはもっと大規模な研究もあり、例えばアメリカ教育省教育統計センターの幼児期追跡調査の論文では、6000人の子どもたちを調査している。24カ月の時点での語彙量が不十分だと5歳までの言語能力も低いと予想できるものの、やはり大多数の子どもは基準範囲に入っていることが報告されている。

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