「脱マスク」が正解?欧米は誰もしてないは勘違い 「同調疲れ」が日本での論争を過熱させている

✎ 1〜 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 17 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

他方、明らかにマスクを外すべき要素も2つある。「熱中症」と「子ども」だ。

これからの熱中症シーズン、顔や呼気からの熱の放散がマスクで妨げられ、内側は高温多湿となる。体温調節が難しくなるだけでなく、喉の渇きも感じにくくなって脱水のリスクが高まる。

2020年6月には国も「屋外で人と2m以上離れている時は、マスクをはずしましょう」と熱中症への注意を呼びかけた。だが、街中で人とすれ違う程度で、立ち止まって誰かと喧々諤々やるわけでもないなら、「2m」と言わずマスクを外していても問題ないはずだ。

むしろ熱中症のリスクをもっと深刻にとらえたほうがいい。蒸し暑い梅雨や夏はもちろん、急に気温が上がる日のある初夏もすでにキケンだ。油断している人が多いせいだろう。

実際、昨年の関東地方は梅雨入り前日までの1週間(6月7~13日)、最高気温が連日28~30℃超に上昇した。熱中症による救急搬送数は前週の約3倍に跳ね上がり、翌週にはいったん半減している(消防庁)。

子どもの「原因不明肝炎」もコロナ禍のせい?

また、子どもは大人よりマスク着用の必要性が低い。新型コロナに感染しても無症状が多く、重症化しづらいからだ。必要でないどころか、着用によるデメリットも大人より大きい。

まず、免疫力の低下だ。

本来なら幼少期までに様々な病原体に出くわし、闘う中で免疫システムを発達させていくはずが、マスクがその鍛錬の機会を奪ってしまう。本来備わるべき免疫がついていなかったり、どんどん薄れている子どもが続出している。

例えば、冬に流行し呼吸器症状を引き起こすRSウイルスは、2020年には新型コロナ対策のおまけで流行が消失し、2021年5~6月に大きな反動が出た(国立感染症研究所)。上半期の患者数は例年の8倍、2020年と比べて600倍になった。通常は2歳までに1度はかかるところ、初感染の年齢が上がり、3歳以上の患者も多かった。

WHOが今まさに警鐘を鳴らしている小児の原因不明の肝炎も、コロナ禍の影響が疑われている。有力なのはアデノウイルス原因説だ。まったく珍しくもない、普通の風邪のウイルスなのだが、免疫をきちんと獲得できていなかったせいで、激しい免疫反応が起きている可能性がある。

子どもは熱中症の危険が大人より高いことも、注意が必要だ。年齢が低いほど体温調節機能も未発達だし、脱水にも陥りやすい。不調を訴えられないでいるうちに、急速に危険な状態に陥ることもある。

そもそも「脱マスク」関連の報道を見ていると、海外ではもうみんなどこでもマスクを外していると思いがちだが、そんなことはない。

たしかに欧州では、屋内の着用義務は大部分解除された。一方で、公共交通機関や病院など着用の必要性の高い公共の場では、義務を残している国がほとんどだ。

次ページ欧米人も「公共の場」では意外とマスクをしている
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事