インドのイケてる企業家、規格外すぎる活躍 キングフィッシャーブランド成功の軌跡

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マリヤ氏は、刺激的なブランドを作りたいと思っていたが、既存ブランドには強い印象を与えるものがなかった。ある日、バンガロールの自宅で、カワセミ(Kingfisher)の書いてある古いラベル紙を発見したことが、ブランド誕生のもとになった。

キングフィッシャーブランドは、マーケティングのサクセスストーリーとして語られることが多い。実は、インドでは酒類の広告・宣伝が禁止されている。その環境下で成功したからだ。間接広告の禁止を回避するため、キングフィッシャーの経営陣は独特なブランド化の提案を考え出した。

インドのリチャード・ブランソン

キングフィッシャー航空は運行停止状態が続いている(写真:ロイター/アフロ)

マリヤ氏は、多くの人から「インドのリチャード・ブランソン」と呼ばれ、“King of good times(楽しい時の王)”というニックネームが付けられた。彼は、世界中に40を超える邸宅、250台のヴィンテージカー、特注のボーイング727、2機のコーポレートジェット、3艇のヨット、F1チームなどを所有している。インド人は、マリヤ氏のぜいたくなライフスタイルを紹介するテレビ番組や、お決まりのテレビでのインタビューを頻繁に目にする。

マリヤ氏は、インドにとって歴史的な価値があると考えられているものを、オークションで落札したことでも知られている。2004年に、ロンドンでのオークションで、ティプー・スルターンの剣を17万5000ポンドで落札し、インドに持ち帰った。ティプー・スルターンは、インド人に高く評価されているイギリス植民地時代に生きた王であり、彼の剣は歴史的な物で、イギリスによって持ち去られロンドンの博物館に保管されていた。

そうした剣をインドに持ち帰ることによって、マリヤ氏は国民的知名度を得た。2009年には、ニューヨークのオークションで9300万ルピーで落札したマハトマ・ガンディーの所有物をインドに持ち帰ったことも、インドに誇りをもたらした。

こうしたエピソードをみると、贅沢三昧の生活を送る人物、インドを愛する国士のようにみえ、まるでビジネスを二の次にしているようにみえるかもしれないが、そうではない。マリヤ氏のベースにあるのは、ビジネスだ。彼のビジネス上の洞察力を物語るのが次のエピソードだ。

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