「返事をしない子が絶望する」親の残念な話し方 無視が最大の意思表示になっているかもしれない

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こうすべき、と押し付けられ、意見をちっとも聞き入れてもらえず、一方的に怒られた─―こうした経験を何度もしてきた末に、自分が選べる作戦はもはや「無視」しかない―─と、お子さんが判断したと考えられます。

「無視」という鎧で自分の周りをガチガチに固めて、防御態勢に入っている、といえばイメージしやすいでしょうか。

つらいですね。親御さんもつらいでしょうが、お子さんはもっとつらいだろうと思います。本当ならば、いざというとき必ず味方になってくれるはずの親に、腹を割って話すことなど到底できない心境にあるはず。お子さんと意思疎通を図るための、何らかの手立てが必要です。

ここまできたとき親御さんにできるのは、コミュニケーションをあきらめないことではないでしょうか。しばらくは、どれだけ話しかけようと反応はないでしょうが、耐えるほかありません。

「晩ごはん何が食べたい?」

「明日は雨が降るらしいよ」

など、お子さんを気にかける言葉がいいと思います。お子さんが自分事化できるような話題を振り、考えを引き出してみてください。粘り強く、ただし、しつこくならないような塩梅を心がけるのがおすすめです。

おなじみのやりとりに隠された子どもの本音

また、「子どもが返事をしない」と同質の問題だと思われるのが、子どもに、

「はい、はい」

と言われて、

「『はい』は1回!」

と親御さんが叱るという、これもまた「反抗期」あるあるの1つです。

親は「はい」と言わせたい一方で、「はい、はい」と2回続けられるとムカッときます。そして、お子さんはというと、どちらのケースでもうんざりしています。

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「はい、はい」と2回言ってしまうぐらい、親が同じことを言っているのです。お子さんの「はい」の回数は、親御さんが同じことを言った回数だと考えておけばいいと思います。

何回も言わなければならないくらい、お子さんがなかなか行動を起こさないのが原因とも考えられますよね。ただ、それは言っても仕方がないし、行動を起こしたくなるような言葉のかけ方の工夫が、まだ足りていないとも言えます。子どもが「はい、はい」と言ったことを叱るより、言わせない方法を探っていくほうが効果的かもしれません。

返事をしない、というのも、お子さんの自己主張の1つ。裏にある理由を考えることが大切です。声をかけるタイミングを計ったり、かける言葉のバリエーションを変えたりしながら、どうすればお子さんとコミュニケーションがとれるのか、工夫してみるといいでしょう。

沼田 晶弘 国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

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ぬまた あきひろ / Akihiro Numata

1975年東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。 スポーツ経営学の修士を修了後、同大学職員などを経て、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校へ。児童の自主性・自立性を引き出す、斬新でユニークな授業はアクティブ・ラーニングの先駆けといわれ、数多くのテレビや新聞、雑誌などに取り上げられている。教育関係のイベントはもちろんのこと、企業からの講演依頼も精力的に行っている。著書多数。学校図書生活科教科書著者。ハハトコのグリーンパワー教室講師。Twitter:ぬまっち(沼田 晶弘)@小学校教諭/@88834

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