なぜ「円安は日経平均に追い風」と言い切れるのか アメリカがインフレ警戒を緩める条件とは?

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新車販売台数が需要を満たせない中で、中古車価格の上昇圧力はなお強い。だが、中古車価格の先行指標として有用なマンハイム中古車価格指数が下向きのカーブを描いていることを踏まえれば、向こう数カ月に中古車価格はピークアウトすると期待される。

また3月中旬をピークに、一次産品価格が安定化しつつあることも重要だ。1年前との比較ではなお高水準にあるが、3月上旬のパニック的高騰は収まっている。例えば原油価格の指標であるWTI原油先物価格は、ロシアのウクライナ侵攻以前と大差のない水準にある。

3~7月累積でいったい何%の利上げ実施を織り込むのか

とはいえ、現在のインフレ率はFED(アメリカの中央銀行)が許容できないレベルにあり、向こう数カ月はFEDが強力なインフレ退治に取り組む公算が大きい。3月の消費者物価指数は前月比プラス1.2%、前年比ではプラス8.5%と高水準の伸びが続き、前年比伸び率は2000年代入り後で圧倒的に高い数値を叩き出した。

エネルギーに関しては、前月比プラス11.0%と大幅に上昇し、前年比ではプラス32.1%を記録。また食料は、前年比プラス8.5%と1990年代以降で断トツの伸び率を記録した。

こうしたインフレの猛威を沈静化させるために、FEDは3月FOMCの0.25%の利上げに続き、5月4日のFOMC(連邦公開市場委員会)においてはQT(量的引き締め、バランスシート縮小)開始の決定をするとともに0.5%の利上げを実施すると広く予想されている。

インフレ沈静化の証拠を直ちに入手できる可能性は低いことから、その後の6月FOMCにおいても0.5%の利上げを敢行すると予想される。またインフレ動向次第では、7月FOMCにおいても「0.25%の利上げに戻す理由」が見つからず、結局3~7月で累積1.75%の利上げを実施する可能性がある。

FF金利先物はそうした「3連続0.5%利上げ」を織り込んでいる。当面の間、長期金利には上昇圧力がかかり、株価には下落圧力がかかるだろう。

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