やっぱりアメリカのインフレは沈静化しそうだ 4つのインフレ要因のうち3つに「明るい兆し」
筆者にとって、3月9日以降の原油価格の「下落」はサプライズだった。ウクライナ・ロシア情勢に大きな進展がないなか、世界的な指標であるWTI原油先物価格は一時的にとはいえ、フシ目の1バレル=100ドルを割り込み、ロシアのウクライナ侵攻直前に接近したからだ。
WTI原油は1バレル=130ドル台をつける場面もあり、オイルショック再来の様相を呈していたことを踏まえると、少なくとも短期的にはエネルギー高に対する不安が後退したと言える。
いうまでもなく、これは資源を持たない日本経済(日本株)にとってポジティブな動きである。もっとも、ここまでの原油価格下落は逆に不気味と言わざるを得ない。景気の下振れリスクの兆候であると思えて仕方がないからだ。
速報性に優れた3月NY連銀調査が急激に悪化したこともその1つである。同指標はマイナス11.8と2020年5月以来の低水準を記録し、ISM製造業と同じ方法で筆者が再作成した指数は55.0へと低下した。内訳は生産(プラス2.9からマイナス7.4)と新規受注(プラス1.4からマイナス11.2)が共にマイナス圏に沈んだほか、雇用(プラス23.1からプラス14.5)も低下。
その他では週平均労働時間(プラス10.9からプラス3.5)と受注残(プラス14.4からプラス13.1)が低下するなど内容も悪かった。最もメジャーな景気指標の1つであるISM製造業の結果次第では、市場関係者の景気認識がさらに下を向く可能性もある。
「銅金相対価格」の低下傾向は何を語るのか?
また景気の先行・一致指標として有用な「銅金相対価格」がここへ来て低下傾向にあるのも不気味だ。安全資産の「金」と景気の強さを示す「銅」の相対価格は、グローバル製造業PMIと長期的に連動性を有するなど、世界経済を映し出す鏡として重宝されている。
「ドクターコッパー」とも言われる銅価格の下落によって、銅金相対価格が下向きのカーブを描いていることは認識しておきたい。中国の2月鉱工業生産が前年比プラス7.5%に持ち直すなど生産活動が持ち直している兆候も認められているが、世界全体でみれば雲行きが怪しくなっている印象だ。
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