やっぱりアメリカのインフレは沈静化しそうだ 4つのインフレ要因のうち3つに「明るい兆し」

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景気減速懸念と言えば、アメリカの社債価格の下落(利回りは上昇)が止まらない点を軽視すべきではないだろう。リスクに脆弱なハイ・イールド債に加え、リスクに相対的耐性を有する投資適格債(IG債)も、利回り水準はパンデミック発生前を上回って推移している。

1月までの世界的リスクオフは株式市場(特にアメリカグロース株)に限定され、単なる割高修正の色彩が強いようにみえたが、2月以降は社債価格の下落を伴っており、このことは投資家が将来の景気後退を意識し始めた1つの証左と言える。

その点、アメリカの長短金利差の縮小は特に注意深く見ておく必要がありそうだ。FED(アメリカの連銀)はインフレ退治を最優先課題として、2022年中は積極的な利上げを敢行する蓋然性が高まっているが、長短金利差を見る限り、そうした引き締めによって景気後退が引き起こされるリスクが高まっているように見える。

3月FOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)で示されたドットチャートによれば、その中央値は2022年末が2.00%(0.25%の利上げ7回相当)、2023年末が2.875%(3回強)、2024年末が2.875%(ゼロ回)となり、恐らく大方の市場関係者にとって予想以上の上方改定となった。

長短金利差の縮小傾向が招く事態とは?

2022年は毎回のFOMCで利上げ、インフレ動向次第では0.50%の利上げも十分に考えられる分布であり、実際、FF金利先物は5月に0.50%の利上げがあることを相応に織り込んでいる。その後2023年は追加で(年央頃までに?)3回強の利上げ、2024年は様子見に転じる姿となった。他方、景気を加速・減速させないレベルの金利とされる中立金利は2.38%へと前回予測時の12月水準(2.50%)から小幅に切り下がった。

労働市場の構造変化などを踏まえ、経済の実力がパンデミック発生前より小幅に下振れるとの見方が浮上している模様だ。今回FEDが中立金利を明確に上回る水準へとFF金利を引き上げる計画を示したことは、多くの市場関係者にタカ派的な印象を与えたと思われる。

そうした積極利上げの方針を受け、景気先行指標として一定の有効性を持つ長短金利差はあらゆる年限間で縮小傾向を強め、FOMC当日の3月16日には、5年と10年金利差が0.2ベーシスポイント(0.002%)とほぼゼロとなった。長短金利差の逆転は、銀行の貸し出し態度厳格化を招くことで信用創造を抑制するほか、そのこと自体が人々の景気後退懸念を喚起してしまい、前向きな経済活動を阻害する。

これまで20年30年、7年10年といった比較的マイナーな尺度で長短金利差が逆転してもさほど話題にならなかったが、5年10年といった比較的メジャーな尺度において逆イールドが発生すれば、株式市場で材料視される可能性は高いと思われる。景気への配慮という意味において積極的な利上げは、不安要素にほかならない。

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