(第61回)2012年度新卒採用動向調査【前半戦】 企業の動向編1

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●学生の質に関する賛否の評価

図表6:学生の全体的な質

 「学生の質が低下」していることはすでに常識。しかし採用担当者の目から見ると、それほど否定的ではない。12年卒学生の質について半数が「昨年並み」と回答している。11%が「下がった」と回答しているが、5%は「上がっている」としている。
 ただし、「5001名以上」の企業は質の低下を強く感じており、30%が「下がった」と回答している。求めるハードルが高く早期の学生接触が多いことが理由だろう。

 「質が下がっている」と回答した採用担当者のフリーコメントをいくつか紹介しよう。

 ・自己分析や業界研究などの情報収集に対する積極性が低い。説明会に参加しても一方的な説明に耳を傾けているだけで、自分から質問を投げかける学生は非常に少ない。(建設・設備・プラント)
 ・友達と一緒に活動している印象が強い。合説はもちろん、プレエントリーもほぼ同じ時間に同じ大学・学部・学科の学生からあることがある。(百貨店・ストア・専門店)
 ・文章作成能力のさらなる低下。記号や顔文字などを平気で使っている。(フードサービス)
 ・全員が早くから就職活動を行っている(昨年は本当に意欲の高い学生が早めに動く傾向)。受付に対してあいさつがなく、素通り。会社の前でたばこを吸う。1人で説明会に参加しない(知り合いと一緒)。(ゲーム・アミューズメント・スポーツ施設)

 好意的な意見もある。「質が上がっている」とする採用担当者のコメントも紹介しておこう。

 ・セミナーの場でメモを取る学生の数が圧倒的に増えた。また、質問も多く出る。(鉄鋼・金属製品・非鉄金属)
 ・年内にもかかわらず、積極的に企業にかかわろうという意欲が見える。文系のみならず理系学生にも同様に意識の変化が見られる。(電機)
 ・昨年がひどく感じた。今年の学生たちは頑張っている印象。しかし、5年ほど前に比べると、ここ2~3年は明らかに粘りの足りない学生ばかりになった。(情報処理・ソフトウェア)
 ・昨年のTwitterから今年のFacebookの活用に至る流れを見ると、情報発信能力の高い学生が年々増えていると感じる。(情報サービス・インターネット関連)

●単純に買い手市場とは言えない「質」の戦い

図表7:採用の手応え

 今回の調査で「採用の手応え」がかなり大きく変化した。「質・量とも苦戦」が昨年7%から今年12%と増加し、「量は問題ないが質で苦戦」が昨年43%から今年29%に減少した。「質の高い学生に絞るため、量では苦労しそうだ」は8%から12%に、「質・量ともに苦戦しそうだ」も7%から12%に増えている。
 つまり「質」だけでなく「量」も問題にする企業が増えている。「基準に達しなければ採用しない」という姿勢では、欲しい水準の学生を確保できなくなっているのかもしれない。
 とくに「5001名以上」は「質・量ともよい学生が採用できそう」は0%という厳しい認識を示している。

 学生の厳しい就活環境が報道されており、12年度採用は買い手市場に見えるが、内実はそう単純ではないということになる。企業はこれまで以上に学生の質を追求しており、質を確保しようとすれば、学生優位になってしまう、と分析できる。逆に言えば、就活に苦闘する学生は今年以上に多くなりそうだ。

次回は、ターゲット採用の現状を中心にお伝えする予定である。

※誤解を招く表現・図表が含まれておりましたので、一部原稿を削除いたしました。
HRプロ株式会社(旧社名:採用プロドットコム)
(本社:東京千代田区、代表取締役:寺澤康介)
人事のプロを支援するポータルサイト「プロ.com」を運営。新卒/中途採用、教育・研修、労務、人事戦略などの業務に役立つニュース、ノウハウ、サービス情報、セミナー情報を提供している。HR担当者向けのセミナーも東京・大阪で開催している。

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