上海「団地5000人を市外隔離」日本人の切実な声 封鎖生活1カ月、住民たちはSNSで抵抗を続ける

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梨浜さんが住む団地は上海でも最も感染がひどいエリアの1つで、3月29日から4月24日まで、毎日感染者が確認されている。一帯は「重度汚染エリア」に指定され、今月は北京から孫春蘭副総理が視察に訪れた(その時だけ配給がグレードアップしたという)。

ドアの外に出られるのは、配達された食料を取りに行くときと、PCR検査時のみ。しかも時間をずらして、ほかの住民と会わないように調整している。にもかかわらず感染が止まらず、団地を管轄する当局のプレッシャーは並大抵のものではない。

ゼロコロナを実現するため、当局は驚きの措置に出た。

「21日夕方、警察が全世帯を訪問し住民情報を確認した。何だろうと思っていると、しばらくして棟のグループチャットに、『警察が陰性の住民全員を他省のホテルに21日隔離すると言ってきた』との情報が流れてきた」(梨浜さん)

夜には50人ほどがバスに乗せられ運ばれて行った。

棟のグループチャットは「こんなの人さらいだ」と騒然となった。ほかの小区でも陰性の住民全員を上海市外に隔離しているとの情報が入ってきた。

同時に「高級ホテルと言われたのに、連れて行かれたのは学校の教室だった」「バス移送中のPCR検査で陽性者が出て、乗っていた全員がそのまま野戦病院(上海市が体育館やイベント会場などを転用して開設した臨時病院)送りになった」との噂も飛び交い、団地の住民5000人の大半が、「警察が来ても鍵を開けず立てこもろう」と気勢を上げた。

住民がヒートアップする中、梨浜さんは連れて行かれることを覚悟し、いつ警察が来てもいいように準備をして寝た。

電話などで夜通し抗議

翌朝目を覚ました梨浜さんは、多くの住民が居住委員会に電話で抗議したり、警察に質問状を出したりと夜通しの抵抗を続け、最終的に全員隔離措置を撤回させたと知った。

住民の1人は警察とのやり取りを録音し、市の相談窓口や国営メディアにメンションをつけてSNSのウェイボ(Weibo)に投稿した。

投稿は瞬く間に拡散し、翌日未明に同地域の共産党トップである書記から投稿者に直接連絡が入った。書記は住民代表らと話し合い、「市外の施設への隔離は強制でなく推奨」「妊婦、高齢者、子ども、障がい者は上海に残れるよう配慮する」「ペットを置いていく場合は面倒を見る」と約束したうえで、ウェイボの投稿文の削除を求めたという。

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