ロシアが戦争を強行してまで領土にこだわる事情 陸続きの周辺国に対してつねに疑心暗鬼の状態

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「いいや、実はほとんどの区間にはなにもない。ぽつぽつと国に出入りできるポイントがあって、旅行者たちはそこを通っていくことになっている。ロシアがまだソ連だった頃、中国との国境は全長7300キロメートルで、当時は世界で最も長い国境だった。飛行機でも9時間かかるような距離だ。恐ろしく長い」(94ページより)

だとすれば、杏が「じゃあ、そういうなにもないところから、国と国を勝手に出入りできちゃうじゃない」と疑問を投げかけるのも当然だ。しかし現実的に、それは容易なことではない。極東、ロシアでも最も東にあるあたりは冬は零下40〜50度にもなる寒い地域であるため、容易に国境を通ることができないからだ。では、ぴったり陸と陸でくっついている国同士は、どういう関係になるのだろうか? カイゾクはこう答えている。

「仲が悪かったり、縄張りを巡ってけんかしていたりすると、お互い多くのお金を使ってたくさんの兵士を国境近くに置いて、にらみ合っていなければならなくなる。必要となれば大きな壁を造って守るということになる。でも、お互いそんなお金や人の余裕もない。昔の中国は、万里の長城という何千キロメートルにもおよぶ長い防壁を造ったが、それで大変なお金と労力を費やしすぎて、国が滅びる原因になったこともあった」(95〜96ページより)

ここで大樹が「でも昔と今で国境の形が違うということは、領土紛争があったのでしょうか?」と疑問を投げかける。カイゾクの答えはこうだ。

「そうだ。中国とロシアも自分の縄張りかどうかでもめて、大戦争を起こしそうになったことがあった。だから双方が『こんなことをしていたらお互いにとってよくない』と思って、なんとか仲直りをした。問題となっていた国境線、つまり縄張りもしっかりお互いの話し合いで決めて、けんかの種をなくすようにした。仲がよくなるにつれ、国境の守りに多くのお金や人をさかなくてもよくなり、お互いずいぶん楽になった」(95〜96ページより)

この解説を受けて中学生の杏は「お隣さん同士、仲良くするしかないってことね」と反応するが、たしかにそれは純粋な反応だろう。

なぜ領土を求め続けるのか

ところでロシアも中国も大きな国なのに、なぜ領土にこだわるのだろうか? 国同士の境目は管理ができないほど寒く、人もいないのだから、こだわらなくてもいいのではないか? しかし、「実際にはそういう考えにはならない」とカイゾクは答える。国が大きければその分、さらに大きくしたいと思うものだというのがその根拠だ。

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