ロシアが戦争を強行してまで領土にこだわる事情 陸続きの周辺国に対してつねに疑心暗鬼の状態
「仮にこの赤い丸を自分の領土としよう。周りはほかの国に囲まれている。そして自分の領土を守るために、周りの国も攻め取って自分のものにする」
カイゾクは赤い丸の外側に、大きな赤い丸を描いた。
「こうすれば、中の丸い部分は安全になる。でも、新たにとった部分は外に面しているからまだ安全ではない。せっかく大変な苦労をして、自分の国のたくさんの兵士の命を犠牲にして攻め取った部分だろうから、なんとしても取られたくないと思うのは自然だ」(97ページより)
そこで自分を守るため、そして過去の苦労を無駄にしないため、さらに周りの土地をどんどん取っていこうと考えるようになるわけだ。自分のものにできなかったとしても、自分の言いなりになる子分にしようと思うようになるかもしれない。さらには、その地域全体を自分たちのものにしようとする可能性もある。
「ああ、それもまったく同じだ」(98ページより)
こう聞いた杏が、「取るとか攻めるとかの前に、周りの国と仲良くすればいいんじゃないの?」と反論するのも当然かもしれない。しかしカイゾクは、「そのとおりだ」と認めながらも、そう簡単にはいかない理由を付け加える。
陸続きになっているとほかの国から攻められやすい
その結果、土地を取りたいと思っている側が「自分を守るためだけにやっている」つもりだったとしても、周りの国からは攻撃的で危険なやつだと思われるようになるだろう。ロシアがクリミア半島を奪ったり、中国が南シナ海の島々を取ろうとしたりしている動きの背後には、こういう心理があるということだ。
それは、第二次世界大戦の前の日本も同じだったと口にしながら、カイゾクは日本のまわりに指で大きな円を描いた。日本が朝鮮半島を自分のものにしたときの話だ。
「大変な思いをして手に入れた土地だから、こだわりも強かったってわけね」
「うむ、いくら領土を広げても安心できなくなる心理は、日本が戦争に負けて、国が破滅する瀬戸際にいたるまで続いた」(99ページより)
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