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ロシアが戦争を強行してまで領土にこだわる事情 陸続きの周辺国に対してつねに疑心暗鬼の状態

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ならば少数民族の側は、独立することをポジティブに捉えるだろう。自分たちの国があれば差別されることもなくなるし、自分たちの言葉が標準語になれば生活しやすくなるのだから。しかも、自分たちのことは自分で決められるという納得感も得られることになる。

だが、去られる側の国からすると話は別だ。国がバラバラになる可能性があるため、政府は独立を必死で食い止めようとするのである。そして少数民族がとどまってくれるような国にするために、そういう人たちの生活を豊かにすることになる。経済をよくすることによって、少数民族を引き止めるのだ。

しかし、豊かになったとしても、民族のプライドを傷つけられれば、そんな国にはいられないという思いが強まって当然だ。したがって大事なのは、その民族の言語、歴史、習慣を重んじること。ものの豊かさだけでなく、心の豊かさも重要だというわけである。

暴力も民族を国にとどめておくための方法

なお、いろいろな民族を国にとどめておくためのもうひとつの方法が暴力だ。意見や立場が違っても、銃を突きつけられたとしたら言うことを聞かざるをえない。そのため銃を持つ側は、必要とあらば抵抗する人たちを撃つことにもなる。国から離れようとして街頭でデモをしている人たちが撃たれて死ぬようなことは、決して珍しくないということだ。

「日本にいると想像しづらいが、多くの国では国を分裂させようとする行動は死刑に値する罪としている。何を悪いとするかは国によって変わってくるんだよ」
「国から出たがる少数民族と、出ていってほしくない国、ですか」
「ああ、出ていこうとする遠心力と、引きとめようとする力、その二つの力が常に働いている。遠心力が強ければ、その分引っ張る力も強くなる」(101〜102ページより)

このことを踏まえたうえで、カイゾクはロシアの問題にも触れている。

「少数民族の独立運動から戦争になったのがここ、チェチェン共和国だ。ここでは1990年頃から長くチェチェン民族による独立運動が続いていた。プーチン大統領は、まず軍隊を送って徹底的に独立派を攻撃した。これが暴力による引きとめだ。その上で、お金をたくさんつぎ込んで地元の人々の生活を良くすることで、運動をおさえこんだ。これが経済による引きとめだな」(104〜105ページより)

本書はロシア軍によるウクライナ侵攻以前に書き上げられたものであるが、それでもこうした平易な解説を確認すれば、現在の状況をより理解しやすくなるかもしれない。こういう時期だからこそ、読んでおく価値は充分にあるはずだ。少なくとも、私はそう感じた。

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