ロシアを相手に交渉で問題解決を到底望めない訳 ウクライナで近年起こった事例から浮かぶ背景

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プーチン大統領は、2014年の2月にウクライナの親ロシア政権が倒れた後、3月にウクライナ領土であった南部のクリミア自治区に侵攻します。

国家元首という命令系統を失ったウクライナの軍部は、適切な対応ができませんでした。このため、ユーロマイダンに参加した自警団の一部が、防衛隊として、国境に向かい戦いました。

ウクライナの政治の混乱時に行われた、この行動はロシアの思惑通りに進みます。西欧諸国はロシアの行動を強く非難しますが、現時点でもクリミアは親ロシア勢力が実質的に支配しています。

責任のある発言ができるように準備する

ウクライナで近年起こったオレンジ革命、ユーロマイダンの事例から次のような歴史的な背景が浮かび上がります。

キーウを中心とする中西部では、ロシアに対する不信感が一層高まります。特にユーロマイダンの流血事件は大きな契機となります。また、自由や権利は自らの手で守るべきという確信も強まります。一方、東部に住むロシア語圏の住民にとっては、ロシアの後ろ盾が弱くなるという不安が高まります。彼らを守るという大義名分をロシアに与えることも可能になります。

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いずれにせよ、ウクライナの近年の歴史的示唆は、相手に主導権を与えては、取り返しのつかないことになるということです。これまで、ロシアという巨大な勢力の影響を受け続け、内戦状態を経て、今の状況を勝ち取りました。特に、国の騒乱時にクリミアで、軍事的な侵略を受けています。

このような状況から判断できることは、ロシアを相手に交渉で問題を解決することはかなり不可能に近いということです。

以上のように、国際情勢を議論するとき、今表面に現れている事象や、間接的に伝わる交渉の条件だけで、賛否の議論をするのは十分でないと言えます。公の立場で議論される方は、これまでの経緯や歴史といったコンテクストを十分に把握した上で、客観的な議論をするべきです。これは、ディベートの訓練を続ければ身につきます。このため、西欧のリーダーは学生時代から、責任ある立場に立つ時期に備えて客観的な論争ができる努力を惜しまないのです。

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