巻き起こる「脱マスク」議論が危険すぎる理由 “必要派"と“不要派"の不毛な分断を招くだけ

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また、「必要派と不要派の両者に納得してもらう」という意味で必要なのは、感染者数、重症者数、ブースター接種の進捗度などの数値や、経口薬の使用、熱中症の危険度などの基準を明確にして進めていくこと。もちろん病院などの例外はあるでしょうし、場所や人などに合わせたきめ細かい対応が求められているのであって、現在のような主に2択で選ばせるような議論は誰も得をしないのです。

アメリカとの比較が不毛な理由

今回の「脱マスク」議論は、冒頭に挙げたようにアメリカでの出来事が発端でした。さらにメディアは、イギリス、韓国、中国などの状況を絡めて日本との比較を報じ、それを見た人々も「マスクをしていないアメリカと感染者数は変わらない」などの声を挙げていますが、どちらも大した意味を持たないでしょう。

その理由としては、まず専門家たちが指摘しているように、日本と外国では、人口、人種、気候、文化などの違いに加えて、感染者数や重症者数、ブースター接種の進捗度、検査体制、感染による免疫獲得などの差が大きいこと。コロナ禍に関してはメディアが一部の情報をピックアップして外国の状況を採り上げることで、「外国に比べて日本は……」という声を生んでいる傾向が強く、今回の「脱マスク」議論も「メディアが仕掛けた」という印象があります。

また、アメリカ・CDCの指針では、大半の地域が「学校や公共施設などの屋内は原則マスクの必要なし」で、推奨されているのは「都市部の一部」「公共交通機関」のみでした。つまり、日本とは現在までの歩みや現状に大きな違いがあるため、比較対象になりづらく、「アメリカがそうなら日本も」という動きにはつながりにくいのです。

さらに言えば、アメリカも州によっては現在も着用義務がある交通機関もあるそうですし、そもそも「アメリカ人の過半数が公共交通機関でのマスク義務化に賛成している」というデータもいくつか見ました。決して「アメリカ人=脱マスク」ではないのです。

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