つまり、「他のことでどんなに気が合う人でも、脱マスクだけで仲違いしかねない」のです。実際、私がこの半年間で話を聞いてきた人の中には、「マスクをすぐ外す人とはあまり会わないようになった」「マスクに神経質な友人が離れていったけど仕方がない」などと人間関係の変化を挙げる人が少なくありませんでした。議論をしなくても離れてしまうほどセンシティブなことなのですから、議論したら修復が難しい状態になってしまうリスクが高いのです。
必要派の怒りと不要派の上から目線
「めざまし8」へのアンケートにも表れていたように、現段階では「マスクが必要」と考える人のほうが多いのは事実でしょう。しかし、「不要」と考える人々を軽んじるのは乱暴な行為であり、単純な多数派優位の生きづらい社会になってしまうリスクもあります。
不要派の人々にしてみれば、「不満を抱えながら着用してきた」という期間が長期にわたっているため、こうした議論になるとどうしても強い言葉を発してしまうもの。一方、必要派の人々は現状に納得しているうえに多数派であることから、強い言葉を発する必然性は薄く、不要派を「相手にしない」という上から目線でいなすような対応をしがちです。
さらに、このような必要派のスタンスを見た不要派の人々は「同調圧力だ」と感じて、より強い反発の声を挙げていく……。やはり「する・しない」という2択の議論は、勝者と敗者を決めるような形で遺恨につながりやすく、できれば避けたいものなのです。
なかには、「いまこそ自己責任論でいいよ。『もう無くても平気』って言う人は外せばいいし、『まだ危険だ』と思う人は安心できるその日までつければいい」という落としどころを作ろうとする声も見られました。ただ、これも危うさを感じさせるアバウトな提案であり、必要派・不要派ともに同意できない人が多いのではないでしょうか。
一部の専門家が指摘していますが、まだ不安を抱いている人が多い日本で分断を生まないための現実的な方法は、段階的な「脱マスク」。「屋外」からはじめて、次に「換気対策をした屋内」、さらに「声を出さない屋内」、「屋内外すべて」というステップを踏んでいく形で、必要派と不要派の壁をなくしていくのが自然な形でしょう。
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