国際離婚で「連れ去り」、子の利益はどう守る ハーグ条約発効で何が変わったのか
「子どもを養育する権利である『監護権』を持つ親の同意を得ないまま、16歳未満の子どもを連れ去ることです。たとえば、国際結婚が破たんした際に、片方の親が勝手に子どもを自国に連れ帰ってしまうようなケースですね。
また、子連れで帰省した後、元の国に子どもを戻すのを片方の親が拒否するような『不法な留置』のケースも、条約の対象となります。こうした場合、子をもともと居住していた国に、迅速に返還するというのが、ハーグ条約の原則なのです」
では、ハーグ条約に基づいて、子どもを取り戻したいという場合、どこに申請すればいいのだろうか。
必ず元の国へ戻されるとは限らない
「ハーグ条約に基づいて子の返還を求めたい場合には、要件を満たしていれば、それぞれの国で定められた『中央当局』の援助を得て、子どもを連れ去った側と返還交渉をすることが可能です。日本では、外務大臣が中央当局とされており、外務省が返還申請等の担当窓口になっています。
日本の外務省と相手国の中央当局が連携して、当事者間での解決が目指されます。東京の三弁護士会などのADR(裁判外紛争解決手続)機関を利用して、協議のあっせんをしてもらって話し合うこともできます。
もし、この交渉がうまくいかない場合、子どもが現在いる国の裁判所に申立てて、その判断に従うことになります。ADR機関を利用した協議のあっせんを経ずに、直接裁判所に返還申立をすることもできます。子の返還の裁判手続は、日本だと東京家裁と大阪家裁が集中的に扱っています」
裁判をすれば、必ず元の国に戻されるのだろうか?
「監護権侵害があることや、子が16歳未満であることなどの要件を満たせば、返還されるのが原則です。
しかし、返還することによって、子どもがかえって危険な状態になる場合や、子の年齢や発達の程度に照らして、子の意見を考慮するのが適当な場合で、子が元いた国に返還されることを拒んでいるときなどには、裁判所が返還を命じないこともあります。返還の実例については、今後の裁判の蓄積を待つ必要があるといえます」
水内弁護士はこのように指摘していた。
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