「吉野家の二の舞」を避けたい会社に必要な対策 「トップより少し下」のジェンダー観にリスク

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当時の世間の反応の中には、83歳(当時)の森氏に対して「感覚が時代とズレている」と指摘するものも多かった。一方で今回のケースは状況が異なる。問題発言をした元常務の年齢は49歳で、新卒でP&Gに入社したのは1996年。男女雇用機会均等法が施行され、女性が総合職に進出したのが1985年なので、いわゆる「均等法世代」よりも後の世代だ。まさにここに、日本のジェンダーバイアスの問題がある。

近年、大企業のほとんどは人事部の内外に人材の多様化にむけて取り組む、ダイバーシティー推進室等のチームを設けている。そうしたチームを対象に行ったインタビュー調査(注1)では、女性活躍に向けて取り組む際、「トップの少し下の層の意識が遅れている」との声が聞かれた。

近年では社内の地道な働きかけにより、すでに現場では管理職を含めた女性の活躍に対する意識は変わってきている。またトップは広い視野の元、その重要性、必要性を理解し、相応の意識を持っている。しかし、そのトップの少し下の層にあたる役員クラスの意識が、アップデートされていないままだというのである。これが世界の中で、日本企業の女性活躍がいまだ遅れている元凶の1つとも考えられる。

やっかいなのは、実はこうした人ほど「男女平等は当たり前、自分は偏見なんて持っていない」と思っている人が多いということだ。ここに大きな落とし穴がある。自分は“わかっているつもり”で、冗談のつもりでいったことが今回のような大問題に発展してしまうからだ。

アンコンシャス・バイアス研修を徹底せよ

こうした問題の対策として、多様な人が共にダイバーシティー&インクルージョンに関する取り組みの一貫として働く近年大手企業の多くで管理職向けに実施されているのが「アンコンシャス・バイアス研修」だ(注2)。

アンコンシャスとは「無意識」、バイアスとは「偏見」のこと。つまり無意識のうちに抱いている偏見のことだ。アンコンシャス・バイアス研修では、複数のバイアスパターンを理解することを通じて、バイアスが発生しても、新しい考え方にシフトし、すぐに対応できるようにすることを目標とする。

性差に限らず、多様なバックグラウンドを持つ人々が働く中で、偏った見方や捉え方をしていると、マネジメントや人材育成の面で影響が出てしまいかねない。そのため、近年多くの大企業ではこの研修を導入しているのである。

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