日本の「チューハイ」世界的に見てもレベル高い訳 ハードセルツァー流行から見えるポテンシャル

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今の流れが始まったのはアメリカでは2010年代半ば、特に後半からのものと考えていいと思います。一方では、日本ではオリオンビールの「ドゥーシー」、サッポロの「ウォーターサワー」など先行する商品がいくつかありましたが、注目が集まったのは昨年11月に発表された日経トレンディによるヒット予測でしょう。

キリンが投入した「スミノフ セルツァー」(撮影:今井 康一)

そこでは特徴として「甘さやアルコール特有の香りが抑えられ、無糖炭酸水のようなスッキリとした薄味の飲み口にある」と説明しています。現在販売されている商品も「甘さ控えめ」「ライトで健康志向」といった特徴を掲げています。

実は日本では、3年前からハードセルツァーが紹介されていました。クラフトビール人気の流れを受けたと考えられており、筆者が確認している範囲では2019年にクラフトビールインポーターがアメリカ・カリフォルニア州のものを輸入したのが最初ではないかと思います。

ゆるい「ハードセルツァー」の定義

ハードセルツァーはサトウキビ由来の糖分を利用した醸造酒と考えられていましたが、実は法律で定義されておらず、「アルコール入りのシュワシュワした水」をどう呼ぶかに規定はありません。

そのため、人気に火がつくにしたがって徐々にウォッカを使用した蒸留酒ベースのものなどが生まれ、現在そのベースの種類は多岐に渡ります。加えて、原料面だけでなく、8%を超えるストロング系、フルーツを大量にしたスムージータイプも出てきています。その語の持つ曖昧さゆえにカバーする範囲は極めて広いということを押さえておきましょう。

原料を問わずフルーツで風味づけをした発泡性アルコール飲料が人気を博しており、蒸留酒をベースに作ったものも現れていることはこれまでに確認しました。一般的にライトな仕上がりとは言え、よくよく考えてみるとハードセルツァーは、日本人にはお馴染みのチューハイにかなり近づいてきています。

日本においてはすでに「ほろよい」のような低アルコール商品もありますし、「本搾り」のようなフルーツフレーバーを全面に押し出したものもあります。また、「氷結」などに代表される甘みのないドライな味わいのものは定番化して久しく、高アルコール度数の「ストロングゼロ」も広く普及しています。そして、どのブランドも多彩なフレーバーを備えていて、他国のものを圧倒しています。

世界に先駆けて「機能性」という面に着目していることも改めて評価すべきでしょう。世界的に「ヘルシー」がトレンドで、欧米では近年やっと低糖質、ゼロカーボの製品が出始めていますが、日本では糖質オフ、糖質ゼロの商品がすでにお馴染みのものになっています。さらにはプリン体ゼロ、そして甘味料・香料・着色料不使用のナチュラル系チューハイも市販されていることは驚きに値します。

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