日本の「チューハイ」世界的に見てもレベル高い訳 ハードセルツァー流行から見えるポテンシャル

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加えて、和食に寄り添う食中酒として麹を使用したものも開発されていて、私たちは食事との相性でRTDを選ぶことさえできます。日本人の食や健康に対する関心は高く、そのニーズを捉えて具体的な製品に落とし込むメーカーの技術力もまた極めて高い。本当にここまでやる必要があるのかと思うほど過剰なのかもしれません。

しかし、逆に考えれば芸が細かいと言いますか、細かなニーズに対応した商品開発がなされているとも言えるでしょう。独自に進化した日本のRTDはガラパゴス的と言うよりもむしろ多様性を持っているとポジティブに捉えるべきものです。気がつけば日本は世界の最先端を行くRTD天国なのでした。

そう言われて驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、こんな意見もあります。2018年、檸檬堂というRTD発売の際、コカコーラは「多くの市場が日本に似てきている一方で、この国の文化はとてもユニークかつ特別なものだと思う」と発言しています。その先見性と独自性はすでに外国が認めるところです。

ですから、私たちは発想を変えるべきなのです。アメリカからハードセルツァーという新しいジャンルのお酒が出てきて日本にもその波が来たと考えるより、むしろ日本で独自に進化したチューハイの流れにいつしかアメリカが追いついてきた、と認識すべき状況にあります。この流れはチャンスです。これまでに蓄積してきた知見を世界に発信するタイミングが来たのではないでしょうか。

日本企業も世界進出へ動き出している

事実、日本の企業はチューハイ作りの知見を生かして世界進出をしようとしています。今年3月に発表されたサントリーの戦略ではアメリカのRTD市場への参入戦略を策定するとしているほか、アジア、オーストラリアにも展開を検討しています。

これに先行して2021年7月、サントリーはボストンビアカンパニーと業務提携し、両社で有名テキーラブランドSauza(サウザ)を冠したRTDを開発することを発表。先月共同開発したSauza Agave Cocktails(サウザアガベカクテルズ)がアメリカでリリースされました。

この事例ではサントリー側はマーケティングを担当していると目され、製造を担っているわけではありませんが、アメリカのRTD市場への足がかりができたと言えそうです。

現地の嗜好に合わせたローカライズも必要ですが、そういった壁を乗り越えて日本企業のチューハイに関する知見がこれからアメリカで花開いていくかもしれません。そして、ゆくゆくは日本のチューハイがそのままCHUHAIと名を変えて世界に普及していく可能性もあるでしょう。

沖 俊彦 CRAFT DRINKS代表

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おきとしひこ / Toshhiko Oki

1980年大阪府生まれ。酒販の傍らCRAFT DRINKSにてクラフトビールを中心に最新トレンドや海外事例などを通算650本以上執筆。世界初の特殊構造ワンウェイ容器「キーケグ」を日本に紹介し、販売だけでなく導入支援やマーケティングサポートも行う。2017年、ケグ内二次発酵ドラフトシードルを開発し、2018年には独自にウイスキー樽熟成ビールをプロデュース。また、日本初のキーケグ詰め加炭酸清酒“Draft Sake”(ドラフトサケ)も開発。ビール品評会審査員、セミナー講師も務め、昨年は大学院にて特別講義も。

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