台湾に好例「GAFAに独占されぬネット空間」作る術 自由で安全に意見交換できる公共の場が必要だ
堤:とても励まされる言葉を、ありがとうございます。オードリーが今言ったことは、デジタルが情報のスピードと質をドラスティックに変えるこの時代を生きる、すべてのジャーナリストにとっての勇気になるでしょう。
人々が情報を得る場所がネット空間に移ったことで、私たちプロのジャーナリストは、新しいジレンマに直面しています。紙媒体と違い、デジタル記事の評価基準は、質よりもスピードとクリック数になりました。ほかの人より速くて、オンラインにいるユーザーが反射的にクリックしたくなる、センセーショナルな見出しのものばかりが増えてゆくのはそのためです。
でもそこにとらわれていると、良質な調査報道のための十分な時間がとれません。各国のジャーナリストたちとオンラインや電話で話すと、いつもこの話になります。いったいどうしたら、民主主義社会に不可欠な、調査報道という公共財産を維持していけるだろう、と。
タン:確かに、広告収入がベースの仕事をするなら、当然広告ペースに合わせなければなりませんね。
そうした仕事はミカの言うとおり、かなりスピードが速いうえに、小さな画面でどれだけのインパクトを与えられるかが重視されます。受け手が記事を読む画面はスマホですから、長文記事も必要ない。あの小さな画面に長文は向かないからです。こうしたことのすべてが、ジャーナリズムの質を維持することを難しくしているというのは、よくわかります。
広告収入を取らない調査報道もある
タン:一方で、台湾で最も優れた調査報道の中には、広告収入をまったく取らないものもありますよ。クラウドファンディングやサブスクリプション、ソーシャルセクターから資金を得ているのです。
これはつまり、人々が質の高い調査報道を入手するために、進んでお金を出しているということです。調査ジャーナリストの側も、広告ペースに合わせるプレッシャーから解放されます。
堤:それはウィンウィンの関係ですね。広告主の呪縛から開放されることは、間違いなくジャーナリズムの質を高めるでしょう。
タン:ええ、おっしゃるとおりです。実際、過去数年の台湾の調査報道賞を見ると、その多くが非営利で執筆活動をしている調査ジャーナリストに贈られていますね。
堤:個人の寄付によるものだけでなく、営利でないソーシャルセクターが資金源という形態も、調査報道の支え方として有効ですね。
タン:はい、まさにそこが重要なポイントです。ソーシャルセクターが資金提供する非営利活動は、調査報道にとって、とても有用です。私は入閣前、台湾のデジタルメディア「報道者(The Reporter)」の読者であり、寄稿者でもありました。
ここは広告をまったくとっていませんが、本当に優れた調査報道をしていますよ。彼らが望んでいるのは、読者が調査ジャーナリストになってくれることなんです。