仕事も人間関係も「話す」より「聞く」でうまくいく ちょっとした心がけで「人生の損」は少なくなる
齋藤:僕は「聞く」に関して、新経済連盟でクリエイティブディレクターを務めたときのことが印象に残っています。代表理事の三木谷浩史さん(楽天グループ株式会社 代表取締役会長兼社長)に、新経済連盟で何をしようとしているのか、話を聞く機会をいただいたんです。
話の内容はそれまでに聞いたことのない内容でした。わかりにくいところを、時に「よくわからないです」と質問して、話の内容を僕が図にしたり例え話にしたりして「それって、こういうことですか?」と聞きました。三木谷さんには普通の人には見えてない部分が見えているようなところがあって、ともかく面白かった。こんな面白い仕事があるんだ、こりゃ役得だな、って思ってたんです。
そうしたら、最後に三木谷さんから「ありがとう。楽しかった」と言われたんです。
そのときに「聞くことは1つのギフトになるんだ」と気づいて。僕は聞いているだけでしたが、きっと三木谷さんにとって頭の整理をする機会になったのだと思います。聞くことそのものが価値提供になると知ったのは大きなことでした。
篠田:素晴らしいですね。
「聞く」ことはギフトになる
齋藤:頭がいい人や強い立場の人に対して、「わからない」という人は少数なんですよね。会社でも「そんなこともわからないのか」と言われたくないから、社長や上司に「わかりません」と言う人は少ないじゃないですか。
だから「あなたの話は難しくてわかりません」と言うことが価値になる。もちろん相手や話の内容に関する基本的な理解がある前提ですけどね。
篠田:それが成立するのは、齋藤さんの好奇心が話し手に伝わっているからだと思います。だから「わかりません」に対して、話し手も素直に反応してくれるのでしょうね。話を聞く姿勢がない中で「わかりません」と言っても、相手は「もうお前には話さない」と腹を立てるだけですから。
齋藤:僕は話を聞くとき、相手に憑依するつもりで聞いているんですよ。相手の視界に何が映っていて、どんな感覚で話をしているのか。幽体離脱する瞬間から脳内でイメージし、相手に憑依して、目の前に自分の姿が見えるくらいまで明確に想像しています。