仕事も人間関係も「話す」より「聞く」でうまくいく ちょっとした心がけで「人生の損」は少なくなる
齋藤:変わるきっかけがあったんですか?
篠田:ほぼ日の経験が大きかったですね。それまでは外資系の大企業にいて、むしろ話すことが奨励されていたから、聞くことに意識は向かなかったんです。
でも、クリエイティブを価値の源泉にしているほぼ日では、「あなたが本当に感じていることや考えていることは何ですか?」という意識が、お客さんにも同僚にも向いている。私もそれを問われ続け、じっくり聞いてもらえたから、「私はこう思う」と自分が考えていることが「ほんとうに思っていること」とは限らないことを理解できました。
逆に「相手が本当に感じていることや、その考えに至った背景には何があるのか」に意識を向けると、今まで見えなかったことが見えてきて、すごく面白かったんです。
齋藤:なるほど。
篠田:その土壌があったうえで、ほぼ日卒業をきっかけにたくさんの人と話をしたことで、気づいたことがたくさんあったんですよ。
自分のことも相手のことも知ることができる
篠田:ジョブレスでどこにも所属がなく、ただ「私」としているしかない中、「篠田さんはこれからどうするの?」と聞かれ、都度話す中で発見することは多々あって。のちに「あのときこう言ってたじゃん」と言われて新しい自分に気がつくこともありました。
同時に、私が話すことで「実は自分にもこういうことがあって」と、結構な確率で相手も心の内を話してくれることに気づきました。何度もお会いしているのに、初めて聞く話だったりもする。きっと無意識のうちに「今の篠田さんになら話してもいいな」と思ってくれたのでしょうね。
もしかすると、私が聞ける状態でいられたら、相手と私の関係性はより深まるのかもしれない。「これはいいな」と思ったことで、「聞く」というテーマを意識するようになったんです。ジョブレスの1年間がなければ、『LISTEN』という本とも、エールという会社とも、出会っていなかったのだろうなと思います。