32歳ニートがサラブレッド牧場に賭ける夢

都会の「若き就職難民」を地方で救えるか

定職に就いた経験がない薮内さんも思いは同じ。それでもこの年になって重い腰を上げたのには理由があった。「父親が定年間近のため、ずっと食べさせてもらうわけにもいかないと思った」。

では、その就職希望先がなぜ広富牧場なのか。日高町は広い海と雄大な山々に囲まれた自然豊かな場所だが、若者の都市部への流出を食い止めることができず、慢性的な若手労働者不足に悩まされている。広富牧場もその一つだ。

経営者は髙橋三千代さん(44)。ここで育てた仔馬の多くは、三千代さんの2歳年上の兄・司さんが経営する育成専門の牧場「ベーシカルコーチングスクール」へと引き渡され、一流のサラブレッドへ向けてのさらなる調整を行う。髙橋兄妹は、代々受け継がれるこの牧場を守るため、競馬の本場ヨーロッパから育成技術者を招くなど、並々ならぬ情熱をもってサラブレッド育成の仕事に取り組んでいる。

36頭のサラブレッドをたった4人で管理

三千代さんは、「雄大な自然の中、馬の成長を間近で見届けられる大変やりがいのある仕事」というものの、近年は慢性的な人手不足に陥っている。「先代から続く生産育成の技術を後継者にしっかり伝えられるか不安。馬に限らず生き物と触れ合うのが大好きな若い人がいたら、ぜひ生涯の就職先として考えてほしい。でも若い人からの就職希望の連絡は、半年に1件あるかないか。そんな状態が3~4年続いている」と漏らす。広富牧場は東京ドーム約6個分という広大な敷地を有しているが、36頭いるサラブレッドを今はたった4人のスタッフで管理しているという。

この一環で募集した広富牧場の求人に応募してきたのが薮内さんである。募集ページにあった雄大な牧場の景色を見た時「ここだ!」と直感が働いたという。「実家の近くだと甘えて戻ってしまうかもしれず、思い切り遠くで働こうと考えた。距離的にも親離れ出来るいいチャンスと思った」。

32歳ニート男性と21歳女性が競うことに。彼らの3週間にわたる密着のほか、愛媛の漁港や医者のいない町でのお仕事お見合いを収めた「ナイナイのウチの村で働きませんか?」(TBS系・一部地域除く)

ただ、ニートひと筋の薮内さんには早くも厳しい現実が待ちかまえていた。昨今の不景気で牧場経営の資金繰りも決して楽ではないため、今回の採用枠は1名。応募してきたのは薮内さんだけでなく、乗馬クラブでのアルバイト勤務経験をもつ21歳女性もいた。2人で競う格好になったのだ。

研修初日、午前6時50分。ニート薮内さんは、昨日近所のホームセンターで購入した作業着に身を包み牧場に現れた。朝の挨拶を終え、最初に体験するのが、「馬房」と呼ばれる馬小屋の掃除だ。寒いうえ、馬のフンで臭いもきついこの仕事を早速体験させてもらう薮内さん。しかし、経営者の三千代さんが少し目を離した隙に、早くもある“失態”を犯してしまう。

はたしてニート薮内さんに人生の逆転は訪れるのか。3週間に渡る密着の模様は、1月21日(水)よる7時56分からの「ナイナイのウチの村で働きませんか?」(TBS系・一部地域を除く)でお伝えする。

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