マクロン再選がフランス国民を憂鬱にさせる理由 金権・利権をさらにわが物とする大統領の実態

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少なくとも、共和国としてのフランスは、現実は別として、それを表では否定していたはずである。確かに実際にはグランゼコールに入るのは、特権的エリートであり、メリトクラシーは十分機能していなかったかもしれない。多くの場合、庶民はグランゼコールという特殊のエリート学校さえそれほど知らなかったのだから、それができたのである。

しかし、今ではグランゼコールのシステムを、庶民も知るようになっている。そうすると、次第に領分を侵す庶民階級を排除すべく、特権階級は、グランゼコールのシステムではなく、それ以前のシステムである家柄を使ったコネクションのほうで、勝負をするようになる。

「セレブを保護」マクロンへの批判

セレブになるには、氏素性が重要だ。マクロンには、こうしたセレブの世界の人間を大事にしているのではないかという批判がある。こうなると、白馬の騎士は落ちた偶像になる。以下のスキャンダルは、その証拠ともいえるものかもしれない。

そのスキャンダルとは、フランスの港湾都市サン=ナゼールにある、国家が3割の株式を持つ、倒産した韓国造船企業の子会社でもあった造船会社STXが、マクロンの友人で政権中枢にいる顧問アレクシス・コレルによって、イタリア=スイス資本の地中海輸送会社(MSC)に売却されたことだ。このアポンテ率いる家族企業のオーナーは、コレルの親戚であったというのだ。しかもコレルは、そこに天下ってさえいて、それを許可したのがマクロンだったというから驚きである。

この事件の真相は、まだ十分に明らかになってはいないのだが、本当ならコネクションによって利益をあげていくという、セレブならではのコネによる取引であることは間違いない。国有財産を一部の特権階級が自由にもてあそぶというのでは、これはもはや共和国ではない。

サルコジとオランドが切り開いた金権体質を、さらに発展させセレブ的金権体質にしたという点では、なるほどマクロンは革命を起こしたといえるのかもしれない。しかし、こうした人物がフランス大統領として、今後また5年も続くとなると、フランス国民の憂鬱は長く続くことになろう。 

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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