マクロン再選がフランス国民を憂鬱にさせる理由 金権・利権をさらにわが物とする大統領の実態
フランスの東部、スイスとの国境近くにベルフォールという町がある。この町は1870年の普仏戦争で、フランス領アルザス=ロレーヌがドイツに割譲された中で唯一フランスに残った町である。やがてフランス国家のナショナリズムの象徴ともなり、著名な彫刻家バルトルディ作の大きなライオン象が、町を見下ろす要塞の中腹に建設された。
このライオン象以外に、これといった観光名所はない。しかし、フランスにとってはこの町は、今でも重要な町である。今やドイツに対する独立を象徴する町ではなく、世界的に有名な高速鉄道であるTGVを製作するALSTOM(アルストム)という会社の工場があることで、世界に対するフランスの技術立国としての立場を象徴する町になっているのだ。ここは、そのアルストムの城下町といってよい。
アメリカとフランス企業に潜む謀略
しかし、今この町は荒廃している。それはアルストムの発電機部門がアメリカのGEに買収され、工場の人減らしが進んでいるからだ。実は、この案件は、フランスとアメリカの関係にとって複雑な問題を提起している。アルストム社の幹部フレデリック・ピエルシが2013年にアメリカで突然逮捕され、この企業は違法な賄賂を使っているとしてアメリカで問題になり、発電部門を結局そのアメリカの企業に売らざるをえなくなったのだ。もちろんこれには、アメリカの謀略がからんでいるという話もある。
当時のオランド政権時代の経済相だったモンブールは、フランスの誇りであるこの電力部門を国営化して守ろうと主張する。しかし、閣議で大統領の顧問であった現大統領のマクロンがそれに強硬に反対し、結局アメリカ企業の買収ということになる。結果としてアメリカのGEになったのだが、どうもこれがマクロンとアメリカとの関係の深さを物語る問題ではないかという話があるのだ。
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