マクロン再選がフランス国民を憂鬱にさせる理由 金権・利権をさらにわが物とする大統領の実態
2022年3月に出た上院報告書によって、マクロン政権とアメリカ企業のコンサルタント問題がスキャンダルになったが、こうした問題はほかにもいくつもある。マクロン政権の掲げるグローバル化は、結局アメリカにフランス資本を売り渡すということなのかという不満が、フランス国民の間から出ているのだ。
2018年11月から始まった反政府運動「黄色いジャケット(ベスト)運動」が標的にしたのは、マクロン政権につきまとう大企業との関係であった。もちろん、こうした関係は資本主義である以上、つねにつきまとう問題である。しかしながら、マクロンになって出てきた問題は、それまでの問題と明らかに違ったところにあるということだ。
マクロンの前の大統領オランド、そしてサルコジもこうした問題を抱えていた。有名なのが、フランス東部メスの北にある、すでにインドのアルセロール=ミタルが経営していたフロランジュの製鉄所の閉鎖問題だ。これは、サルコジ政権下ではじまったフランスの国際競争力のための合理化問題の1つでもある。オランドは2012年の大統領選の前にサルコジが進めようとした閉鎖を翻し、国有化して雇用を守るといっておいて、当選直後それを破ったのだ。
オランドやサルコジの世代が政治を学んだのは、ミッテラン政権の1980年代であった。とりわけ社会党が政権に就いていた時代である。この政権は主要な企業を国有化した。そしてそれを再度私有化したのだ。その結果、社会党は極めてキナ臭い資金を獲得することになる。
肥太る国有財産の民営化
ウクライナ問題を複雑にさせている問題の1つが、国有企業を私有化する際に起こる汚職の問題だ。共産党政権の中ではすべての資本が国家に集中している。その資本を私有化するのは簡単ではない。それは民間に資本蓄積がないからだ。だからこそ、ソ連崩壊以後アメリカから資本がなだれ込み、それと元共産党の幹部が組み、民営化の中で巨万の富を得ていった。
これを通称「オリガーキー」といっているが、このオリガーキー集団は元共産党の幹部であり、なおかつ崩壊したソ連軍の残党と武器を入れたことで、民兵に近い武装組織を持っていた。有名なのが、ウクライナの元首相で「金髪美女」として知られたユリア・ティモシェンコだが、一介の党員から華麗な億万長者に変身したのだ。これをめぐって、ウクライナではオリガーキー同士が熾烈な戦いをする。それが今のウクライナ問題に深く影を落としている。
翻ってフランスの場合も、それに似たことが起きたのだ。政権を獲得することで、利権が入る。その利権によって、社会党も徐々に大きな利益を得るようになる。とりわけ国営企業を民営化する際に、巨額の利益が転がり込んできたことで、金ピカ社会党員が出現することになった。その代表が後にやがて裁判で問題になる企業家兼社会党の大臣ベルナール・タピであった。
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