闘病14年、享年21歳のアイドルが遺した生きた証 小学2年から脳腫瘍と闘い続けた丸山夏鈴の人生

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<先生の説明では、
・進行のスピードが早い
・放射線治療は肺に負担を掛けてしまうので出来ない
・治ることは難しい
・でも抗がん剤は続けよう
・在宅酸素になってしまうけど退院して、やりたいことをやってくれ
とのことでした。
この説明の前にも、先生たちに「治らないのかな~?」と聞きましたが、どの先生も言いづらそうに「難しいかな~」と返ってきてました。
その後退院して、今は在宅酸素しながら生活を送っています。
(略)
病院の先生の説明から、「長く生きられないかもしれない」というように捉えるのが普通だと思います。
その通りで、今は一生懸命やるしかないです。>
(かりんの夢への階段/2014年10月17日「今の私の状態について。ファンの方には必ず読んでほしいです。」)
『Eternal Summer』の販促に向かう夏鈴さん(2015年2月26日のブログより)

一生懸命やるしかない。だから全面休業はせず、体調のいいタイミングを見計らって12月にはオリジナル曲のレコーディングを行い、翌年2月初旬にはシークレットライブも実行した。そして、2月27日に念願のデビューシングル『Eternal Summer』を発売。激痛で救急車を呼ぶこともしばしばあったが、それでも肺にたまった水を抜きながら発売イベントをこなした。それらが一段落した3月末に故郷に戻り、長期を見据えた入院生活に入る。

次はいつ復帰できるかわからないし、戻れない可能性も否定できない。それでもアイドルとして生き続けるためには、いまある状況で活動を続ける必要がある。2年前に6回目の手術で入院した際も動画配信を考えたが、そのときは病院の迷惑になるからと断念した。ただ、もっと小規模にスマホで短い動画を発信するだけなら差し障りはないのではないか。そう考えて4月5日からYouTubeで「まるやまかりん」チャンネルを開設し、「夏鈴のひとりごと」というショート動画の配信を始めるようになった。

亡くなる数時間前まで発信

<こんにちは。今日から動画を少しずつ配信していきたいと思います。よろしくお願いします。ばいばーい。>
(夏鈴のひとりごと/2015年4月5日)

動画で明るい笑顔を振りまく一方、病状は深刻さを増していく。動画配信時でも酸素チューブが外せない日がしばしばあり、体重も40kgを切って久しい。何とか筋肉をつけようと、なるべく栄養価の高いものを食べたり、病棟を歩くリハビリに励んだりする様子をできるかぎり元気な口調で語る。

外出して愛犬のチェリーと戯れる様子や、車椅子に乗りながら家族といちご狩りを楽しんだ様子が動画に残っており、配信のたびにしっかりと身なりを整えて臨んだことがわかる。病状を伏せることが厳しいなかでも、ファンに元気を与えるようなアイドルとして振る舞うこと。それが夏鈴さんにとっての公開の条件であり、最終的な境界線だったのかもしれない。

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