ウクライナ情勢と第2次大戦前との不気味な相似 世界最悪の1938~41年の歴史から何が学べるか

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1. イギリスのチェンバレン首相という理想主義者がドイツの世界侵攻を抑えるキーマンになっているという状況が、ロシアの侵攻に対峙するアメリカのバイデン大統領の態度と類似している
2. 「欧州情勢は複雑怪奇」とまで言われたドイツにとっての抜け道が、ロシアにも残されている
3. アジアで当時日本が欧米各国から受けていた制裁内容が、現在のロシア制裁と酷似している

もしも不幸にも歴史が繰り返すとどのようなリスクのある未来がやってくるのか、1938年から1941年の世界の歴史を振り返ってみましょう。

イギリスのチェンバレン首相はどう動いたか?

今から85年前、欧州での新たな脅威とはドイツでした。第1次世界大戦で失ったドイツ領を回復させる目的でドイツがオーストリアを併合しチェコスロバキアに侵攻した。その状況はロシアのクリミア半島占領や親ロシア地域である今回のウクライナ南部・東部への侵攻を思わせる行動です。

この当時、世界でドイツを止める役割を期待されたのがイギリスのチェンバレン首相でした。理想主義者で宥和政策を採りたがるチェンバレン首相は政治家としては現在のアメリカのバイデン大統領と似ています。チェンバレン首相は1938年のミュンヘン会談でドイツからこれ以上の侵攻はしないことを約束させ「これで危機は終わった」と満足して帰国します。

ところでドイツに侵攻されたチェコの首脳はこのときの決定に涙したと言われています。ウクライナにとっては破壊され蹂躙されたキーウ近郊の都市への補償は重要事項です。そしてロシア軍に実質支配されることになった南部・東部がどうなるのかはこれからの関心事です。これからの展開が大国の介入する停戦協定となればクリミア半島同様にウクライナ南部・東部について現状維持が容認される可能性は十分にありそうです。

さて過去の歴史についての本当の恐怖はこの先です。1939年にチェンバレン首相はドイツに裏切られることになります。ドイツはそれまで犬猿の仲だと思われていたソ連と独ソ不可侵条約を締結したうえでポーランド侵攻を始めるのです。

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