角田:たしかに、「数学が苦手な生徒に、こうやって教えたら彼が目を輝かせていました」と書いてくれたほうが「なるほどな」と思うね。一方で「自分が家庭教師をやっていた生徒が〇〇大学に受かりました」と言われても「ふーん」で終わるよね。
加藤:そうそう。「What自慢」になると、このご質問者の方みたいに「私なんて……」みたいになってしまうから、「How自慢」をするんだよ。自分一人だけができる、というのは難しいかもしれないけれど、あまりできる人がいないだろうHowって、それぞれ持っているはずだから。
文章は「魅力的」でなくていい
角田:次に「魅力的な文章を書く方法」という質問に答えようか。
加藤:それで言うと、そもそも文章が魅力的である必要があるのだろうか?
角田:おお。僕も同じことを思った。
加藤:僕は「表現」と「表記」という言葉を使い分けていて、実は「表現」よりも「表記」のほうが個人的には好きなんです。あまり盛らずに、自分の五感から得たそのままを書くのが「表記」で、一方の「表現」は少し下心というか、「盛ってる」感じがする。そこで表現ではなくて、表記する意識で書いてみると、同じ字数でより多くのことが伝わるはず。
角田:装飾分だけ文字数が減るから、情報量を多くできるよね。加藤くんが言ったことに僕も同感だな。質問では「魅力的な文章を書いているおふたりに」とあるんですが、僕自身は魅力的な文章を書けているとは思わないし、なんなら「魅力的な文章とは、そもそもなんぞや?」と思っているくらいです。
加藤:加藤も「魅力的な文章を書けている」と思ってないな〜。
角田:同じく、よく「面白いことって、どうすれば言えるんですか?」みたいなことを訊かれるんだけど、僕自身は、「面白いことを言おう」と思って喋ったことはないんだよね。
なぜかというとこれは環境の要因もあって、明石家さんまさんをはじめ僕なんかより面白い人がいる前で、「面白いこと言ってやろう」なんか恐れ多くてできないわけだよ。そんなの絶対に面白くないし、そもそも敵わないじゃない。
そういう人たちに僕がどういうふうに接していたかというと、「一生懸命喋る」しかできないし、それでいい。一生懸命喋ると声がうわずっちゃったり、言葉を噛んじゃったりするのを、さんまさんなんかはツッコんでくれるからさ (笑)。
バナナマンの設楽統さんに初めてお会いしたときに、やっぱり一生懸命「あれでね、これでね」って喋ってたら、ずっと手を振っていたらしいんだよ。
加藤:ああ、そうなっちゃう時あるよね。