30兆円マネーはどこへ、国債・郵貯からの預け先

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30兆円マネーはどこへ、国債・郵貯からの預け先

「30兆円もの資金の入れ替わりが起こる大チャンス」。金融機関では昨年末から、個人部門の動きが慌ただしさを増している。

きっかけは「個人向け国債」の初の償還だ。2006年1月に初めて発行された、固定金利5年物の償還期が1月17日に到来。当時の金利は約1%と、直近の0.3%程度と比べ高い。満期を迎える金額は、11年の1年間だけで約4兆円、12年もほぼ同額ある。さらに10年ごとに集中満期を迎える郵便貯金の定額貯金を合わせると、向こう2年間で30兆円近くが個人の口座に振り込まれると推計される。

銀行側は、これらの償還資金がほかの運用商品に再投資されれば、販売手数料を獲得する機会になると想定。5年国債の1%と同じ利回りが得られる受け皿商品の開発や、販売体制の整備など、昨年から周到に準備を進めてきた。

たとえばみずほ銀行ではニッセイアセットマネジメントの国内債券型投信「ニッセイ日本インカムオープン」(通称「Jボンド」)を先行して導入。「まだゆったり構える顧客が多い」(同行)が、17日から1週間の販売額は順調に増えているようだ。りそな銀行は終身保険など保険商品の販売強化に取り組む。「昨年10月から年金担当者向けに研修を実施し、ニーズの掘り起こしに努めている」(同行)。

どこよりも必死なのが、国債を発行する財務省自身だ。金融機関に偏った国債の保有構造を是正すべく、個人に直接国債を保有してもらおうと、国債の商品性そのものの改善に踏み切った。従来は5年物・10年物しかなかったが、昨年には固定金利3年物を新たに投入。今年7月に発行される変動金利10年物では、設定法の見直しによって金利引き上げを打ち出す。

11年度の個人向け国債の発行額は2兆円の予定。ただ足元を見ると、今年2月発行の3年債の金利は0.22%と、魅力は薄い。「これに新発債を含めれば、償還の半分も国債に再投資されないかもしれない」(財務省理財局)。

もっとも、「国債保有者は保守的な運用志向が強く、償還資金の7割は普通預金の口座にとどまったまま」(住友信託銀行)と、冷めた指摘も聞かれる。「貯蓄から投資へ」という流れを実現するには、いまだハードルが高そうだ。

(撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2011年2月5日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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