高い買い物ほど「直感で」決めたほうがいい理由 逆に安い買い物は熟慮し買うほうが後悔しない

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スイスにあるチューリッヒ大学のブルーノ・フレイは、歴史上、最悪の海難事故と言われているタイタニック号と、ルシタニア号での事故を比較しています。

タイタニック号は、1912年4月14日に沈没し、1517名の死者を出しました。ルシタニア号は、1915年5月7日に沈没し、1198名の死者を出しています。どちらも同じような豪華客船で、死者の数も似たようなものでしたが、この2つの事故には、大きな違いが見られました。

タイタニック号の乗客は、あまりパニックを起こさず、比較的理性的に振る舞いました。子どもは大人よりも14.8%も多く生き延びました。「女性と子どもは優先的に脱出させるべき」という理性が働いて行動したためです。

ところが、ルシタニア号では、大人のほうが多く脱出し、子どもは大人より5.3%少ないという悲しい結果になりました。また、タイタニック号では、女性は男性より53%も多く救出されたのに、ルシタニア号では女性のほうが多かったのですが、わずかに1.1%だけでした。ようするに、ルシタニア号では、大人の男性が、女性と子どもを放っておきながら、われ先に脱出したことがわかります。つまり、パニック状態に陥っていたのです。

沈没までの時間に大きな差

フレイによると、ルシタニア号でパニックが起きたのは、沈没までの時間のせい。

タイタニック号は、浸水がゆっくりで、沈没までに2時間40分もかかったのです。時間があったので、人は正常な理性を取り戻すことができたのだろう、とフレイは推論しています。一方、ルシタニア号のほうは、沈没までにわずか18分。こういうときには、自分だけが助かりたいという利己的な衝動で人は行動してしまうようです。

災害や事故では、人はパニックになりやすいと思われていますが、実際にはそうでもありません。本当に時間的に危機が差し迫っているのでなければ、わりと理性的に行動できるようなのです。

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