観光地が遠い、鉄道置き換えた「BRT」の課題は何か 停留所の増設も乗降客は限られる・大船渡編

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路線名にもなっている外口で集落は途切れ、次の合足(あったり)まで約7分間もバスは停まらない。すっかり夜の風景となった綾里駅前には17時10分着。運賃は420円と比較的安いが、買い物帰りなど利用客は数えるほど。当然ながら公的補助の対象となっている路線だ。

夕暮れ時の綾里駅(筆者撮影)

大船渡市内で1泊し、いよいよ鉄道の旅に戻る。1月24日月曜日は、小雪が舞う寒い日だった。7時33分に釜石から着いた2両編成の三陸鉄道の列車は、高校生で埋まっており、駅舎を通り抜けて市内各地にある高校へ向かう路線バスに乗り継いでゆく。7時40分発の住田高校前行き、7時47分発の立根行きなどで、接続はうまくできている。

盛駅の全景。左からBRT。三陸鉄道、岩手開発鉄道(筆者撮影)

折り返し、盛8時03分発の久慈行きに乗る。綾里までは長大トンネルの連続。綾里を出て次の恋し浜との間で、ようやく海が見える。日中の列車では恋し浜で3分ほど停車。すっかり観光地と化した駅で記念撮影タイムとしている。

ただ、この地域の公共交通の実情は、それほどのんびりしたものではない。大船渡市東部の地勢は、指のように何本も突き出した半島の付け根に三陸鉄道が通っている形。“指”の部分の過疎化の様子がわかるのが、無料の「患者輸送バス」の存在だ。

診療所へ通う患者が利用できるバスに一般利用客も便乗できるもので、綾里、越喜来(おきらい)、吉浜の3地区で運行されている。公共交通機関とは言いがたいし、そもそも朝、診療所へ向かいお昼頃に各集落へ戻るダイヤでは乗りようがないので試乗は遠慮したが、そこまで公共交通への依存度が下がっているのかと感じられる。

旧三陸町の中心地であったため、三陸を名乗っている駅の所在地が越喜来地区。三陸駅の愛称は「科学の光」だが、これは2007年まで町内にあった、宇宙航空研究開発機構の三陸大気球観測所にちなむ。

三陸鉄道で市境を越える

三陸町内には2001年まで町営バスが存在していたが、大船渡市への合併前に廃止。さらに、2020年3月末までは、県立大船渡病院―立根―越喜来―崎浜間に、岩手県交通の路線バス「崎浜線」が走っていた。運行が続いていたら当然、乗っていたが、廃止後ではいかんともしがたい。廃止後は患者輸送バスで間をつないだ後、2021年10月からデマンド交通へと移行した。ただし、区間は三陸鉄道三陸駅と崎浜地区の間に限られ、大船渡市中心部へは鉄道の利用を促している。

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三陸の次の吉浜が、1973年に国鉄盛線として開業した時の終点。1984年に三陸鉄道へ移管され、吉浜―釜石間の開通により盛―釜石間が全通している。かつては釜石―大船渡市内間を直通する路線バスが存在した。東日本大震災後、三陸鉄道が不通になり、このバスが代替輸送を務めている。

2013年に盛―吉浜間の運転が再開された後は、翌年の全線復旧まで、釜石―吉浜間を路線バスが結んでいた。ただ運転再開後、大船渡市と釜石市を跨いで走るバス路線は廃止され、今、市境を越えるのは、吉浜―唐丹間の三陸鉄道リアス線と、東京、仙台と釜石を結ぶ高速バスぐらいになってしまった。私もそのまま、三陸鉄道で釜石市へと足を踏み入れた。

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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