観光地が遠い、鉄道置き換えた「BRT」の課題は何か 停留所の増設も乗降客は限られる・大船渡編

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大船渡は大船渡湾の西岸に沿った細長く、狭い平地に建物が集中している町で、山裾まで民家が集まっている。そのため、海岸沿いの漁業、商業関係施設は、盛駅近くまで湾をさかのぼってきた津波で壊滅したが、高台にある公共施設は多くが助かり、避難・救護施設として被災者の支援に充てることができた。

観光地の碁石海岸に到着した岩手県交通バス(筆者撮影)

路線バスは、岩手県立大船渡病院や大船渡市役所など、こうした山の手の施設に立ち寄るよう、系統が設定されている。立根―サンリアショッピングセンター―盛駅前―県立大船渡病院間がバスの幹線で、ほぼすべての系統がここを通る。大船渡市内のバス路線は一括して岩手県交通が受け持っており、コミュニティバスとの形は取っていない。

BRTの大船渡駅(筆者撮影)

被災したか助かったかの境目は、おおむねJR大船渡線の線路で、跡を継いだBRTが大船渡駅など海岸沿いのエリアを結んで走る。細浦に戻り、14時49分発の便で終点の盛まで乗った。鉄道時代と大きくは変わらないであろうが、利用客の主力は高校生である。鉄道時代の名残か気仙沼、一ノ関方面まで乗る客もいるにはいるが、時々見かける程度だ。

碁石海岸口と同様、大船渡市内ではBRTの駅の増設が続いており、2015年に下船渡―大船渡間に大船渡魚市場前。2020年には細浦―下船渡間に大船渡丸森、大船渡―盛間には地ノ森、田茂山がそれぞれ開業した。利便性向上を狙った施策だが、いずれも乗降客は限られる。

2020年度のJR東日本の統計では、大船渡丸森、大船渡魚市場前とも1日平均5人。地ノ森がおなじく14人、田茂山が11人といったレベルである。海側に再建された産業地帯への通勤需要を期待しているようではあるが、思うようにはいっていない。専用道を走る点以外、沿線住民には路線バスと違いがさほどないように思えるBRTだ。いずれ岩手県交通の路線バスとの統廃合の話が持ち上がらないとも限らない。

久しぶりに鉄道の香り

盛には15時07分に到着。ここは元の1・2番線が舗装され、大船渡線BRTの乗り場になっているが、3番線の三陸鉄道リアス線乗り場はそのまま。さらに貨物専業の岩手開発鉄道のヤードが奥に広がっており、盛んに石灰石輸送列車が往来する。海岸線をたどっていると、久しぶりに「鉄道の香り」がする場所だ。

ただ、三陸鉄道は盛―綾里(りょうり)間は内陸部を走り、大船渡湾の東岸沿いには岩手県交通の綾里外口線がある。綾里駅前発盛駅前経由立根行きが1日3本、立根発盛駅前経由綾里駅前行きが平日4本、土休日2本というダイヤである。

盛駅前に入ってくる綾里行き(筆者撮影)

盛駅前16時14分発の綾里駅前行きに乗り込む。この系統も大船渡市役所や県立大船渡病院などを経由してから盛川を渡り、赤崎を経由。岩手開発鉄道の赤崎駅のそばも通る。ここは別の機会に取材したことがあるが、太平洋セメントの工場に併設されており、岩手石橋駅から運ばれてきた石灰石を、豪快に降ろしてベルトコンベアで運び込む様子が公道からでも見ることができる。なお、大船渡市内の鉄道で震災後、真っ先に運転を再開した鉄道は岩手開発鉄道だ。

途中で日が暮れてしまったが、綾里外口線もまた、リアス式海岸が眺められる風光明媚な路線だった。曲線が多い未改修の悪路もあり地元住民にしては歯がゆいところだろうけど、旅で訪れるなら楽しいという矛盾も感じる。

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