マツダ「CX-60」今あえてFRを採用する巧妙な意図 直6ディーゼルも新規開発したマツダの戦略

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この疑問に対して、専務執行役員の廣瀬一郎氏は、「2012年からのマツダの歩み」である「ビルディングブロック戦略」について改めて説明した。

ビルディングブロック戦略とは、マツダの商品について“基礎から徐々に積み上げていくように、段階的な発展を目指す”という経営方針だ。そして、そのフェーズ1は、2012年から始まった。マツダが、社内向けに第6世代と呼ぶ商品への対応だ。

ベース技術を進化させるため、エンジンの燃料にマツダ独自の思想を盛り込んだSKYACTIV(スカイアクティブ)を量産化し、同時に車体構造についても生産体制の刷新も含めた大幅な見直しを行った。モデルでいえば、2012年2月に発売された初代「CX-5」からだ。

ディーゼルエンジンの搭載が衝撃的だった初代「CX-5」(写真:マツダ)

そして、フェーズ2の前半戦が、2019年発売の「MAZDA 3」からのスモール商品群でスタートする。ここでは、エンジン技術の進化に加えて、「MX-30」でBEVへの対応を始めた。

フェーズ2後半戦の第1弾が「CX-60」

車体については、フェーズ1の考え方を大きく進化させた「スケーラブルアーキテクチャー」として、多モデル化への対応を拡充。駆動方式は、FFで統一した。

また、新規SUVモデルの名称には2桁の数字が与えられ、「CX-30」や北米向けの「CX-50」が登場している。ここまでが、すでに市販化されている商品群だ。

北米向けとなる「CX-50」のエクステリア(写真:マツダ)

そして今回、フェーズ2の後半戦として、ラージ商品群が「CX-60」からスタートする。廣瀬氏は「ラージ商品群技術導入の狙い」として、3つのポイントを強調した。1つ目は、地域で異なるボディサイズやパワートレイン要求の両立だ。

具体的には、全長や全幅の違いによる効率的な派生車種開発と、クルマの取り回し性能の両立を図ること。さらに、エンジンの排気量や気筒数、各種のハイブリッド技術を派生させることだ。

2つ目は、電動化技術を展開する際の容易性だ。これは、マツダが自社開発するエンジンやトランスミッションを電動化技術と組み合わせる中で、“部品の共通性”を持たせることを意味する。そして3つ目は、商品力と価格競争力の両立である。

今は、グローバルで厳格化が進む環境規制や衝突安全規制に、コストパフォーマンスを上げて対応することが必須となっている。そのため、比較的少ない投資で効率的に開発し、生産技術を進化させていく必要があるのだ。

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