マツダ「CX-60」今あえてFRを採用する巧妙な意図 直6ディーゼルも新規開発したマツダの戦略
マツダが新世代戦略の中核として位置付けるラージ商品群の第1弾、「CX-60」がヨーロッパで発表された。
これを機に、マツダは報道陣向けに同社の美祢自動車試験場(山口県美祢市)で「ラージ商品群技術フォーラム」を開催。このフォーラムには、CX-60プロトタイプの試乗も含まれていた。
自動車産業界では今、カーボンニュートラルに対する急激な市場変化がグローバルで進んでおり、それに関連してマツダの新規事業に対するさまざまな疑問が、大手メディアや自動車関連メディアの記事や一般ユーザーのSNSを通じて発信されている。
筆者は、そうしたさまざまな疑問の中で代表的な2点について、「ラージ商品群技術フォーラム」の現場で、マツダの各部担当役員や開発エンジニアに直接聞いてみた。
疑問1:なぜ今、FRなのか?
FR(フロントエンジン・リア駆動)は、自動車の長い歴史の中では王道であったが、2000年代以降は小型車から中大型SUVまで、FF(フロントエンジン・フロント駆動)が主流になっている。
特に日本車の場合、日本市場の主流である軽自動車、コンパクトカー、そしてミニバンのほぼすべてがFFであり、トヨタ「RAV4」をはじめとした人気のSUVも、そのほとんどがFFあるいはFFベースの4WDだ。
FRベースのSUVとしてスズキ「ジムニー」やトヨタ「ランドクルーザー」があるが、本格的な“クロスカントリー系SUV”という、特殊な位置付けの車だと捉えられている。
また、スポーツカーではトヨタ「スープラ」、日産「GT-R」、マツダ「ロードスター」など、セダンではトヨタ「クラウン」や日産「スカイライン」などがあるが、世の中の主流はFFであり、1960年代から1990年代までのように、FR車が当たり前に存在している時代感ではなくなった。
海外に目を向けると、アメリカでは市場の約6割を占める「ライトトラック」カテゴリーで、ピックアップトラックとSUVは、その部品共通性から中大型車で旧世代のFRが延命されている印象がある。
また、ドイツを筆頭とするヨーロッパのメーカーでは内燃機関をともなう“FFかFRか”ではなく、一気にBEV(電気自動車)へ飛躍する動きが出てきた。ヨーロッパ市場での規制対応から、2020年から2030年にかけて、一気にBEVへシフトすることを表明している。
こうした状況で、なぜマツダは今、あえて新規のFRプラットフォームを開発したのだろうか。
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