小田急VSE「白いロマンスカー」何が特別だったか 一線退くも「まるで新型車両」の先鋭的デザイン

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居住性の高い客室と裏腹に、運転室は非常にスペースが限られている。“2階部分”にあるため、運転士は客室の天井にある電動格納式の昇降はしごを使い、椅子を回転して体の向きを変え、中央に足を伸ばした状態で座る。加速やブレーキは左手で横にあるハンドルを操作する。

VSEの運転室は展望席の上部にある (記者撮影)

中央の2台の液晶モニターはメーター類を表示したり、タッチパネルでスイッチを切り替えたりする。さらにその左に車両後方の監視用、右の側面には列車情報管理装置用のモニターがある。

VSEの運転経験がある同社社員らに話を聞くと「当社初の『グラスコクピット』でモニターや機器の配置が新鮮であった」「当社初の窓が開かない運転台であったため、速度感覚がつかみにくかった」という「当社初」にまつわる思い出が挙げられた。

運転士も「ヒーロー的優越感」

また「ほかのロマンスカーに比べて、お子さまから手を振られることが多かった」「はしごを上げ下げするときに、車内やホームから歓声があがり、乗り降りしているときのヒーロー的優越感に浸れる」との声も。乗務することの誇りとやりがいにつながっていたことがうかがえる。乗務員はGSEが登場する2018年まで、VSE担当だけが別のデザインの制服を着用していた。特別感を味わっていたのは乗客ばかりでなかったようだ。

箱根湯本駅付近を走行するVSE=2020年11月(記者撮影)

2編成で延べ600万km以上を走行して約2000万人の利用者とそれぞれの思い出を運んだVSE。2023年秋ごろの引退までは、臨時ダイヤのイベント列車などで運用される。同社は引退理由を「車両の経年劣化や主要機器の更新が困難になる見込みであるため」と説明している。

だが、まるでこれから登場する新型車両であるかのようなVSEの先鋭的なデザインは、そうした事情を忘れさせるほど、いまも強烈なインパクトを放っている。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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