副社長3月退任、日立「鉄道ビジネス」立役者の足跡 英国高速鉄道とM&Aで成長、世界大手に比肩

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2021年8月には、フランスの防衛・航空宇宙大手タレス社の交通システム事業を買収すると発表した。詳細を詰めた上で2022年度後半に契約締結となる。「長年にわたって買収したいと考えていた」とドーマー氏が言うほど、タレスの鉄道信号システムは世界的にも評価が高い。2020年度におけるタレスの交通システム事業の売上高は16.1億ユーロ(約2195億円)。買収による規模拡大により各国の独占禁止法に抵触する可能性があれば重複分野は買収の対象から外れるため、タレスの交通システム事業がそのまま日立の売上に単純にプラスされると決まったわけではないが、日立の業容拡大には大きな弾みとなる。

さらに同年12月にはロンドンからバーミンガム、さらにその先のマンチェスターやリーズまで結ぶ高速鉄道路線「ハイスピード2(HS2)」向け車両の製造と保守をアルストムと共同で受注した。これも総額19億7000万ポンド(約3157億円)の大型プロジェクトだ。一方で、同月には、アルストムが保有する高速鉄道車両プラットフォームに関わる関連資産などを取得することを決めている。これによって日立の高速鉄道車両のラインナップが拡大し、さらなる案件獲得の後押しとなる。

ドーマー氏、今後の道は?

このように2021年は将来の規模拡大の布石がいくつも打たれた年であった。しかし、ドーマー氏はそれを見届けることなく、2022年3月31日付で日立の副社長の職を辞した。バー氏は引き続き鉄道ビジネスユニットのCEOを務める。

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4月以降、ドーマー氏は日立の欧州における地域統括会社、日立ヨーロッパ取締役会長にとどまるため、日立との縁が切れるわけではない。ただ、日立広報によればドーマー氏の仕事は、文字通り取締役会の会長職であり、これまでのように鉄道ビジネスを直接指揮することはないという。

ドーマー氏はまだ58歳。脂の乗り切った年齢だ。日立ヨーロッパ取締役会の会長が役不足とは言わないが、ドーマー氏の鉄道ビジネスにおける経営手腕が存分に生かされるポジションではない。このままキャリアを終えるのか。それとも将来、日立あるいは競合他社で再び鉄道ビジネスに関わる可能性があるのか。今後の去就には要注目だ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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